Facebook 2014年8月29日

スイスのエネルギー政策、水辺環境と原発(3) 「段階的脱原発」の争点ともなっている首都ベルン郊外のミューレベルク原発をめぐる住民運動団体と州当局の意見対立、「即廃炉」か「2019年廃炉か」か?

スイスの行政・政治制度をここでおさらいしておく必要があるでしょう。

原発の建設許可や安全性、稼働の判断は連邦 (国) ですが、具体的な電力政策では26ある州(カントン)が力を持っています。というのは電力供給を担う主体である会社に資本参加をするのが州であり、原子力だけでなく水力発電所なども経営判断しているからです。

日本で言えば、関西電力など地域別電力会社が実質は自治体と繋がっていて、自治体の意思を無視できないという状態を想像するとわかりやすいでしょう。ただ、日本では巨大電力会社がエネルギー政策で自治体の意思を尊重することはほとんどありません。

また「省エネ」や「再生可能エネルギーの普及」などのエネルギー政策も、州や市町村など自治体が中心となっています。「エネルギー政策は国策」として、これまで一貫して自治体に口を出させなかった日本とは大きく異なります。

このあたりの事情については、今回ご案内いただいた滝川薫さんの著書に詳しく記されています(写真を参考にして下さい)。

そこで今回は時間もかぎられていることから、首都のベルン州のエネルギー政策を、近接のミュールベルク原発とからめてたどってみます。

ミュールベルク原発は、稼働後42年経っていて、しかもアメリカGE社製造の福島一号機と同じ機種です。首都のベルン中心部から12キロという至近距離にあります。

福島事故の影響もあり、老朽化による危険性から「即時運転終了」を求める住民イニシアティブが出され、今年の5月18日にベルン州の住民投票が行われましたが、住民の63%が即時運転終了に反対の意思を示しました。つまり「2019年までの運転」を認めたことになります。

ベルン電力側は「2019年廃炉」という方針をだし、マスコミ報道などで、ベルン電力は「エネルギーヴェンデ(変革)」に自ら舵を切り、再生可能エネルギー拡大にも積極的という進歩的会社のイメージをひろげました。同時に、廃炉のためには、あと5年運転しないと費用が不足し、不足したら住民納税者に賠償金を請求すると脅かしました。

今回は、ミューレベルク原発の「即時廃炉」か「2019年廃炉」か、という住民投票の選択肢に大きく関わった二人のキーパーソンもお会いすることができました。

「即時廃炉」を主張した住民運動のリーダーである マイク・キューニさんと、ベルン州エネルギー環境庁代表の ウルリッヒ・ニュッフェネッガーさんの主張をかいつまんで紹介します。滝川薫さんのアレンジで、8月26日の午前と午後、お二人に直接インタビューができました。

詳しくは次の報告で。

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