Facebook 2018年10月31日

「倉敷市真備水害被害調査(その7:まとめ)」柚木みちよし衆議院議員の政策勉強会で、縦割り省庁の限界をただすために横串をさす「防災省」の設置を提案。滋賀県の経験に基づいたものです。真備報告はこれでひとまとめとさせていただきます。10月30日、中くらいに長いです(2500文字)。

もともと歴史的にみても地震・津波・水害などの「天変地異」が多い日本社会ですが、今回の西日本豪雨では、ダムや堤防など水害対策施設の「計画規模」を超える雨量(「超過洪水」と言います)が続き、ダム機能の喪失や堤防の破壊が起きてしまいました。その中でも倉敷市の真備地区は、河川堤防の破壊で、平穏な町の暮らしが数時間のうち泥の町と化し51人もの死者と4600戸もの浸水被害が出てしまいました。

8月から10月までの嘉田の真備調査は、衆議院議員の柚木道義さんご本人と秘書の戸次(べっき)さんたちの協力で可能となったものです。柚木さん自身、二度と同じような災害被害を出してはいけない、と現場でいっしょに聞き取りをし、また国や県・市の災害対策や被災者支援の仕組みなどを調べて下さいました。その結果の報告会を10月21日に柚木さんが主催をして倉敷市で行いました。

まず嘉田から「いのち守りぬくまちづくり治水への想い~倉敷市真備での水害被害と滋賀県流域治水条例」として、FB上でも報告させていただいたような真備地域での被害状況とその社会的、歴史的背景などについて講演をさせていただきました。そして今後の方向としては、ハード対策としての堤防補強や河川改修だけでなく、避難体制の強化など、流域地域としてのソフト体制づくりが必要と強調させてもらいました。

特に水害で死者を出さないためには、日常的に地域コミュニティ内での個人や家族単位での「避難カードづくり」などが有効であり、愛媛県肱川の氾濫では、氾濫面積が大きかったわりに死者が少なかった背景として、肱川流域の大洲市の三善地区など、避難体制が確実にできていた例を紹介しました。三善地区は国の内閣府の防災政策のモデル地区として避難体制を強化していました。

しかし、内閣府という役所は、国土交通省や農水省の出向職員が多く、防災や減災の経験が蓄積されにくい組織です。その上全国的な下部組織のネットワークがなく、まさに全国で数ケ所のモデル地区しか実践できておりません。全国レベルで、県や市町村の津々浦々の河川政策をつないでいるのは国土交通省ですが、残念ながらここでは水防活動は軽視されています。真備地区でも8月7日に現場視察をした時、国土交通省の担当者は「堤防の外・人が住む側の水防は私たちの仕事ではない」とはっきり言いきっておりました。驚きました。

というのも、滋賀県では、河川管理の担当者は今では「堤防の外・人が住む側は担当外」とは言えない仕組みをつくりました。それが「流域治水条例」による河川管理です。滋賀県では2006年以降、「流域政策室」をつくり、そこが母体となって「流域治水基本方針」をつくり、2011年には土木部の河川関係課をまとめて局に昇格させ「流域政策局」をつくり、「流域治水条例」をつくる母体としました。条例の目的は① 人命が失われることを防ぐことを最優先とし、 ② 生活再建が困難となる被害(床上浸水)を避けること、としました。

それゆえ、河川のダムや堤防施設などをつくることは最終目的ではありません。これは手段です。目的は人びとが住むところ、つまり人が暮らす流域での被害を最小化することなのです。具体的には河川改修などの「流す」対策に加えて、流域で水を貯留して川に洪水を集中させない「ためる」対策、また伝統的な昔ながらの治水の仕組みを活かし、危ない所には住宅等をつくらないというような土地利用規制や、縦方向の避難ができる建物配慮も行う「とどめる」対策、そして避難・水防強化をすすめる「そなえる」対策、すべてがセットで「多重防護」を目指しています。堤防やダムはあくまでも手段であるという理念が政策の構造の中に埋め込まれています。

また同時に嘉田は2006年の知事就任直後の2007年に「防災危機管理局」をつくり、地震・水害などの災害対策の一元化をはかり知事直轄組織としました。そして県下全域の7つの土木事務所の所長に災害時の被害の最小化を責務とする「地域防災監」の役割をわりあて、県と地域のネットワーク化を強化する組織化を行いました。

また防災危機管理の機能を組織的に強化するだけでなく、空間的に「危機管理センター」をつくりました(構想開始は2011年だが、完成は2015年の嘉田退任後です)。新幹線新駅や6つのダムなど必要性の低い箱モノを中止・凍結した嘉田ですが、これからの未来への住民の安全・安心を埋め込むための防災危機管理の機能強化のためのセンターづくりにはエネルギーを注ぎました。ここは行政中心であるばかりでなく、「生活防災」の拠点として、住民が活用可能な「公の施設」としました。住民利用を重視した防災危機管理センターは全国ではじめてと思います。

さて、10月21日の、倉敷市の柚木議員との対談の結論は、省庁縦割りの防災対策では命を守りきれない、横串をさす防災省の設置を国会で提案する、ということになりました。愛媛県大洲市三善地区のような、成果をだした前向きの前例を今後も展開したいと。「成功したところ、よかったところを評価して、そこから前向きのモデルをつくろう」というねらいの中で「一点突破、全面展開」の拠点としての防災省の提案です。

柚木さんは、国会の質問数の多さでは定評があり、いわゆる「三ツ星議員」の評価をいただいております。今後の国会での活動展開を期待いたします。国会での質問はゼロでも、地域での票稼ぎに奔走している議員は多いです。運動会や敬老会など、ともかく地域回りだけで票をあつめる国会議員が多い中で、柚木議員は本来の国会議員としての役割を果たしておられます。今後に期待をさせていただきたいと思います。

真備地区の長い調査報告におつきあいいただきありがとうございます。12月上旬に愛媛県の肱川の水害被害調査と講演を行う予定です。また後ほど報告させていただきます。

 

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