Facebook 2015年11月19日

地域文化に根差した琵琶湖方式の「ハートウェア」による環境再生手法を、マレーシアのセランゴール川流域の「統合的流域管理」に応用した事例を、京大工学部の発表会で聴かせていただき、感動しました。私からは、「Our Mother Lake, Lessons from Lake Biwa」として、過去40年の琵琶湖研究者として、また8年の知事としての経験を語らせていただきました。11月29日。(長いです)

ハードなモノ(ハードウェア)だけでない、法制度などの社会的仕組み(ソフトウェア)だけでもない、人びとの心の持ち方や価値観に根差した思いが活かされないと環境再生は実現しない、という「生活環境主義」的視点がマレーシアでも活かされた、という報告を本日いただきました。

ちょうど3年前でしょうか、京大工学部の清水先生たちの衛生工学の調査グループが当時の滋賀県知事室に尋ねてこられました。それまで長い間取り組んできたマレーシアのセランゴール川での流域管理プロジェクトをどう進めていくのか、相談を受けました。

そこで、琵琶湖周辺の住民生活の中で連綿と積み重ねてきた「共有の価値観」の重要性や、水や生き物とのかかわりを住民自身が調べるホタルや生活用水などの「住民主体型調査研究」、「地域コミュニティ自身の環境保全活動」などを紹介しました。セミナーでまとめて講演もさせていただきました。

「ハートウェア」という手法をえらく気にいってくださったようで、琵琶湖博物館の展示を見たり、高島市の「生水の郷 針江」や「赤野井湾流域協議会」を訪問して、住民生活に根差した活動の意味を体得くださったようです。

そしてマレーシアに帰られてから、2年ほどかけて聞き取り調査や住民参加の活動をすすめて、「食卓で楽しむ本」(Coffee Table Book)「PASANGAN」として今回見事な書物をまとめられました。感動でした。

250頁ほどの写真と語りがたっぷりつまった、熱が伝わる熱い本、英語とマレー語で編集され、最後には手持ちの地図つきのパンフレットも添付されています。企画調査から編集を一貫してなさったSITIさん、ZEEDAさん、プロジェクトのまとめをなさったAZIZANさんなどのご苦労はいかほどだったか!見事なお仕事。

しかも直接の責任者が皆女性!というのも女性の社会的活躍が保障されているマレーシアらしいです。昨日のダボス会議での日本女性の地位、101位と公表。先進国最下位国としてはうらやましい!と思わず口から出ました。会場はもりあがりました!

またセランゴール川というのは、日本から「ホタル見学」の観光客が押し掛ける日本人にとってのなじみの川でもあります。「ハートウェア観光」という方向も提案してくださっています。地域や若者、女性にきちんとお金がおちるような観光や環境保全をすすめてほしいとお願いしました。

ちょうど、高島市の針江で住民の方が自分たちの暮らしぶりを紹介するように、今後、じっくり着実に伸ばしていきたい分野です。

 

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