Facebook 2018年12月19日

「ヒアラシの 寒風に咲く ナデシコに 季節はずれの 心意気見る」、今の我が身に照らしてみる琵琶湖岸の情景です(微笑)。12月19日。中くらいの長さです(1000文字)。

日本の冬の季節風といえば北西風、と思いがちですが、滋賀県・琵琶湖の北湖沿岸では南西の強風となるような日があります。このような風は、湖西や沖島では、昔から「ヒアラシ」と呼んでいます。東京出張等でなかなか浜に出られたかったのですが、今朝、浜に出てみたら琵琶湖大橋の方向から、強い南風。「これがヒアラシだ!」。橋板も大きな波をかぶり、底土がまきあがり、遠方の比良・蓬莱山はうっすらと雪景色。

実は1990年代初頭からうごきだした琵琶湖博物館準備室では、住民参加の環境調査を博物館運営の柱に据えたいと思い、その中に「夏はホタル、冬は雪」というテーマで「生活と科学の接点の生き物・気象調査」をはじめました。気象系の報告書は1999年に『ビワコダス・湖国の風を探る』として出版。環境教育の方法論とあわせて、特に琵琶湖の風に関心が深い漁師さんたちからの聞き取りを集めました。その中に「ヒアラシ」という琵琶湖特有の風情報がたくさんふくまれていました。

当時から気象情報の観測を行いながら生活と気象との関係を調べてきた松井一幸さんは、「ヒアラシは,”天気を荒す者”という意味をこめた地方言葉」と言っており、「ヒアラシが3日吹くと,その後は雪か雨」と昔から湖西では言われてきたようです。ただ、ヒアラシの吹き方には大きな気圧配置が影響しているようで、先ほど北小松に住まいする松井さんに電話で尋ねたら今回のヒアラシは雪にはならないだろうということでした。松井さん、詳しくまた解説下さい。

さて一方、カワラナデシコは日当たりの良い開けた環境が好きで、人為的に草刈りなどがなされ、人の手がはいった「里山」的環境が好きです。開発の影響で自生地や個体数が減少しており、地域によっては「絶滅危惧種」に指定されています。琵琶湖岸では比較的多く自生していて、幸いわが家の前の浜には毎年6月下旬から咲き始め、秋には種を残して消えていきます。ただ、今年は秋があたたかかったせいか、寒空の元、最後の花を咲かせています。

ナデシコは「秋の七草」のひとつで「なでるようにして大切にあつかう子ども」の意味であるというのが語源のようです。万葉集の山上憶良の歌に「秋の野に 咲きたる花を 指折り(おゆびおり) かき数ふれば 七種(ななくさ)の花」 とあり、清少納言の「枕草子」にも「うつくしきものは なでしこの花」と称えられています。 源氏物語や徒然草など多くの文芸にも現れています。冬のナデシコは種を残しつつも、春先のようなみずみずしさはありません・・・。

 

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