Facebook 2016年11月24日

「マザーレイク発 ママアスリートが安心して活躍するために!」のシンポジウムが大津市民会館の大ホールに700人以上の参加者を得て、無事終了。びわこ成蹊スポーツ大学の学生でつくる「びわこなでしこプロジェクト」が、滋賀県の少子化対策・学生プロジェクトから助成を受けて主催しました。講演者の松田貴雄医師、4人の女性アスリートのお話、前例のない挑戦の人生経験、感動場面でした。主催いただいた皆さん、またご参加いただいた皆さん、ありがとうございました。11月23日(勤労感謝の日・祝日)。(また長いです:微笑)。

シンポの最初に私からの挨拶は三点。まず男子学生はじめ男性がたくさん参加してくださっていることに感謝(会場は女性よりも男性が多かったです!)。二点目は、女性アスリートの結婚・妊娠・子育ての困難は今やタブーにせずに、皆で学び支えあえる社会にしたいのでこのシンポがきっかけになったらありがたいと。三点目はこのシンポは自分たちの将来に安心を埋め込みたいと願う若い女子学生主体ですすめてきており、そこに意義を見出していただきたい、と。

まず松田先生の講演にさきだって、「なでしこジャパン」前監督の佐々木則夫監督(びわこ成蹊スポーツ大学特別招聘教授)から、本日の講師の松田先生をビデオで紹介。松田先生は、なでしこジャパンのチームドクターとして選手を支えてくれた、ということ、また本日参加の宮本ともみさんが子ども連れで参加したなでしこキャンプはなごやかで、子どもさんはチームで大歓迎だったことを紹介くださいました。

松田貴雄・国立病院機構・大分県西別府病院スポーツ医学センター長の講演は、女性の成長に伴う月経、貧血、骨そしょう症など、女性特有の生理に伴う医学的知識が満載でした。充実の1時間でしたが、参加者からいただいた講演後アンケートの中で最も多かった声は避妊ピルの利用についてでした。

「ピルについての認識が大きく変わった」「これまでピルを続けると妊娠できなくなると思っていたがそれは誤解だった」「ピルをうまく活用して、競技中は貧血を防ぎ、体力を保ち、妊娠ができる条件がきたら、ピルをやめて妊娠したい」という声が多く寄せられました。

まさにこの点が、今回の松田先生の講演のメインメッセージでした。多くの参加者にこのメッセージは正しく伝わったようです。特になでしこジャパンの澤穂希さんの例は説得的でした。澤さんは選手時代に10年以上、松田先生のアドバイスで、「低用量ピル」を活用して、月経をおさえ、血液流出による貧血を防ぎ、同時に貴重な卵子を温存して、現役引退後に結婚をして、その直後にピルをやめて、すぐに妊娠できた、ということでした。

松田先生が説明する「低用量ピル」の効果はこういうことでした。つまり、女性の体内にある卵子は数が決まっており、月経時の排卵で数が減っていくという。かつて明治時代などに子どもを産み続けた女性は生理がなくて、逆に50代まで妊娠可能であった、という。つまり、「月経」という「不要な排卵をしない」という体の仕組みが活きていたことになります。

これまで、ピルの服用には妊娠できなくなるなどの否定的なイメージも多いがそれは事実と異なるという。ピルは、人間の脳から排卵をさせないように生殖体に指示をする作用にとどまり、結果、貴重な卵子が女性の体内にとどまり温存されるという。

つまり、ピルを活用することで、高年齢でも、ある意味、元気な卵子を維持できるということです。言い変えたら、ピルを使うことで、生理痛を避けられ、貧血をもたらす出血を防ぐだけでなく、限られた卵子を温存できることになるということです。つまり「受精するあてのない卵子を放出するのはもったいない」ということです。

松田さんの講演直後、私の方から、ピルの入手方法を具体的に尋ねました。「生理痛などがある」という訴えで、一般の産婦人科医院では、ピルの処方は保険適用され、1ケ月1300円程度で利用可能ということです。それも初経後3ケ月後くらいから利用可能ということです。つまり、中学生、高校生でも可能ということです。このような講演内容が、結果としてアンケートでの前むき評価につながったようです。

この後、4人の女性アスリートを交えたパネルディスカッションが、佃文子びわスポ大学教授の進行で進められました。一人目の元サッカー女子日本代表の宮本ともみさんは、1999年にアメリカでの大会に参加した時に、アメリカにママさん選手がたくさんいたことにカルチャーショックを受け、自分も子どもをもってもサッカーを続けたいと周囲に働きかけ、子どもを産んだあとも努力をして復帰ができたという。チームの理解、母親など家族の協力が大きかったという。

元バレーボール女子日本代表で京都の北嵯峨高教諭の大村加奈子さんは、高校卒業後久光製薬でプレーしていたが、辻知恵さんや荒木絵里香さんたちが、子どもを産んでからもプレーをしていたので、先輩についていきたいという思いが高まったという。育児をしながらアスリートを続けるためには、何よりも①家族の支援が必要であり、次に②職場の理解、そして保育園など子どもをみてくれる③社会的環境が必要と主張しておられました。

三人目のゲストは、今回特別参加のデンマークからのジュリアン・エランダ―・ラスムッセンさんです。大津市・滋賀県とデンマークを、東京オリンピックの「ホストタウン構想」としてつないで下さった杉藤洋志さん(京大ボート部専属コーチ)が、11月末に、ジュリアンさんが琵琶湖に来られるので、ママアスリートとしての活躍を滋賀県の人たちに紹介したいとお申し出下さいました。

杉藤さんは、ジュリアンさんが19歳の時から今30代後半まで、ずっと彼女の競技人生をみてこられたので、是非とも彼女のママアスリートとしての経験と頑張りを日本に紹介したいということでした。今回日程的にも偶然といえるほど、あまりにもうまくこのシンポとつながったので、杉藤さんにお願いをしてジュリアンさんに参加をお願いしました。事前連絡や通訳などご面倒なこと、すべて杉藤さんがお世話下さいました。本当に偶然の、しかし「待ってました!」というお出会いでした。杉藤さん、ありがとうございました!

ジュリアンさんのお話は、会場の皆さんにも深く納得できる、まさに説得的な経験談だったと思います。子どもを産むことは人間として自然なこと、子どもを産むことで、人間は自然に強くなる。人生のプロセスで妊娠して、子どもを産んで、いつも自分の体と対話をして、アスリートとして、体力的にも、精神的にも充実できた。子どもを持ってから1分たりとも無駄にできないと思い、充実して練習をして、体力を維持し、ボート選手としての生活を続けてきた。 子どもたちは、競技の場にも、練習キャンプの場にもつれていき、子どもも喜んでいると、たくさんの写真を用意してお話下さいました。

何よりも旦那さん(ロンドンオリンピックのデンマークでの金メダリスト)や、ご自分のお母さま(子どもさんの面倒を全面的に引き受けてくれている)、またチームデンマークの組織的な支援が、これまでのジュリアンさんの競技生活をささえてくれていることが、多くの写真付き報告で理解できました。このあとは、2020年の東京オリパラにむけて頑張ってほしいです。

4人目のパネラーは、びわこ成蹊スポーツ大学の4期生の大田紀詩子さんです。スポ大学時代も長距離ランナーとして、陸上部の渋谷先生の指導のもと、活躍下さいましたが、卒業後も、マラソン選手として、新潟や和歌山で活躍し続けて下さいました。びわスポ大学卒業の旦那さんと結婚後は、和歌山県で柑橘農家を続けながら、女子800メートル やハーフマラソン選手として競技選手を続けてきたということ。

大田さんは、子どもが生まれてからは、練習時間の確保も大変で、子どもが起きるまでの午前4時から午前6時までの早朝時間を自己トレーニングにあてた、ということです。ただ、競技人生を続けられたのは、スポ大学の卒業生である、信頼できるパートナーと、お父さん、お母さんなど祖父母の支えも大きいということです。太田さんは、アスリートが子育てと両立できるためには、旦那さん、つまりパートナーには、料理できる力などの生活力をつけてほしい、と要望しておられました!

実は今日は、本学の副学長の鳥羽賢二さんのバレーボール競技仲間である、バレーボール女子の日本代表次期監督に内定しておられる中田久美さんもご参加下さいました。女子アスリートを引っ張るリーダーとして、是非とも今回のびわスポ大学でのシンポの内容を聴きたいということで、はるばる東京からご参加下さいました。1984年ロサンゼルス五輪銅メダルなど、アスリートとしての中田さんのご活躍は皆が知るところですが、今後の日本女子バレーボール監督としてのお仕事、おおいに期待させていただきます。

今回のシンポジウム、女性が母親として、アスリートとして両立できる医学的、社会的学びの場として、今後の展開を期待したいです。びわスポ大としても、学生、教職員ともども、頑張りましょう!!

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