Facebook 2017年1月22日

京都精華大学環境社会学科時代の教え子、現在、滋賀県立大学地域共生センター研究員の北井香さんの結婚式にご招待いただく。「地酒の縁」で結ばれた、大津市桐生の成子辰徳(なるこたつのり)さんと香さんのお二人が演出した、オリジナルな心温まる結婚式。その模様を写真とともにお届けします。2017年1月21日。(また長いです:微笑)

まず結婚式は、伝統ある大津市桐生の箭簳(やの)神社で、早朝から地域の皆さんの協力をいただきながら、両家のご親族とともに、白無垢の花嫁姿で三三九度の杯。1000年以上前に京都吉田神社から勧請したという、地元桐生では「産土神(うぶすなかみ)」の神前で結婚式をあげたのは数十年ぶりという。事前のお掃除など、桐生の皆さんのご協力あっての結婚式だったということ。(この写真は辻村耕司さんからご提供いただきました。)

草津市内のホテルでの結婚式は大変ユニークなもの。お二人を引き合わせたお仲人さんの大津市平井酒造の平井さんのご挨拶、それに続く特製の「浅芽生(あさじお)」の「地酒の鏡開き」。ケーキットではありません。引き出物はお二人が企画した「浅芽生の醸(かもす)」。桐生の成子家ゆかりの成子哲郎さんがすいた「成子和紙」をラベルに使い、お互いを思いやる醸(かもす)の家庭をイメージしての引き出物。「醸」の書は友人の書家、青木恒香さんの作品。今その「醸」をいただきながら、この文章書いています(微笑)。

乾杯の音頭は、こちらも「地酒の縁」でおふたりをつないだ草津市の「酒のかなざわ」の金澤邦彦さん。辰徳さんは、地酒を楽しむ若者の会の代表をしておられたという。新郎方のお祝いは、辰徳さんがお勤めの会社社長、粟飯原博行さま。建設現場の仕事で、大きな信頼をいただいている辰徳さんの人となりを具体的にご紹介いただき、なぜ香さんが「ほれ込んだのか」納得のお言葉でした。

次に私のお祝いの言葉。香さんは、私自身が2000年にフルタイムの大学教員となった時に発足した京都精華大学環境社会学科の第一期生です。私の環境社会学の基本理論は「村と家の社会学」です。水質や生き物という個別環境要素の元には、自然と人とのかかわりに埋め込まれた地域社会の社会構造が隠れています。

そこでまず滋賀県高島市畑の棚田調査をするところから、北井さんにアドバイスをしました。また人が先祖につながる家系の意味も伝えました。彼女の研究成果は見事でした。卒論は200名の学生の間での最優秀賞をいただき、この研究の源は香さん自分が育った奈良県山添村の住民としての経験が光っていました。

改めて彼女の卒論を紹介すると、タイトルは「“地の民”の根性と“むら”の生き残る道を考える―生活者と調査者、二つのまなざしで農村存続を模索する―」です。「生活者」とは自分の奈良県山添村での経験、「調査者」とは滋賀県など各地を調べた自分の立場。過疎化や高齢化で悩む農山漁村のこれからを、大学卒業時の香さん自身が記しています。「私は人生の岐路となるこの時期にさしかかり、私自身の家系を顧み、土台となった祖先を想像し、その大地に刻み込まれた記憶を思い、自分の役割を強く意識するようになっていた」と記しています。

今から13年前の2004年3月、北井香さんの京都精華大学の卒業論文で自覚した“地の民”としての実践を、1000年の伝統ある大津市桐生地区の成子家に嫁入りすることで果たそうと思っているのだと、今回改めて北井さんの人生の決意の意味を理解しました。そして「地の民」の覚悟と人間性の力を、成子辰徳さんに見出したのが香さんの決意ではないだろうか、と私自身、今勝手に解釈しています。

そこで、今回私は、結婚式の祝辞としては異例かもしれませんが、成子さんの家のご両親と地域の皆さんにお願いしました。両親との同居を前提に「嫁入り」する香さんの覚悟を、成子家として受け止めていただけるとありがたい。そして具体的には彼女が今、滋賀県立大学の研究員として追及している仕事と家庭生活を両立できるように、夕食づくりとか、家事をお姑さんである成子栄子さんに協力してほしいとお願いしました。

本日の結婚式のハイライトは、花嫁である香さんからの両親への異例の感謝の言葉でした。辰徳さんがマイクをもって、香さんが、心からのご両親への感謝を語ってくださいました。奈良県山添村伏拝での多世代の家族の中で自分がいかに愛情深い両親に育てられ、ご先祖様からのつながりを得て自分があるか、自分が北井家を出て、成子に嫁ぐその後は、弟秀典さんに託したいことなど、ご両親とご先祖さま、そして伏拝という土地への感謝の言葉を涙ながらに紡いでくれました。その言葉を紡ぐ香さんを支えるべく、横でマイクを握る辰徳さんの表情には、香さんへの尊敬・レスペクトが溢れていました。

このおふたりの表情、しぐさをみせていただき、私はお二人の間に育まれた相互理解、そしてこれからの家と地域を担っていく覚悟と愛情をみせていただきました。辰徳さん、香さん、それぞれに見えない過去も経験もあるでしょう。これからのおふたりの幸せ、そして成子家の将来への反映と、伝統ある桐生地区に嫁入りした異色の香さんを地域としても受け入れていただけたら、と深く、強く、希望いたします。

3月末には、友人の皆さんと、友達披露の会をひらかれる、ということ、皆さん、その時にご参加ください!

香さん、辰徳さん、勝手な解釈と披露、ごめんなさい!

先頭に戻る