20210420参議院法務委員会【確定稿】

令和三年四月二十日(火曜日)


○嘉田由紀子君 碧水会の嘉田由紀子でございます。少数会派にも二十分という時間をお与えいただき、ありがとうございます。
 今回のこの所有者不明土地問題、また土地所有権の国庫への帰属、私は、自治体の経営者としても随分苦労してきたテーマでございますので、よくぞ法案をここまで詰めていただいたと感謝を申し上げます。
 具体的に、先ほど公明党の谷合議員、また維新の清水議員、本当に重要なポイントを指摘いただきました。例えば、ため池や果樹園は、国の方は、農水省にしろ、なかなか扱い得ないというような問題。ただし、それらはこれからの日本の生物多様性やあるいはグリーンインフラなどを考えるときには大変重要な場所であると。その一つの利用として、ランドバンクという新しい仕組み、清水議員が質問してくださいました。この辺のところは是非前向きに、国土管理、そして新しい時代の土地利用というところで御期待を申し上げます。法案の提出には賛成でございます。
 せっかくいただいたお時間の中で、私、一貫して、本当に日本の子供たちが不安定な状態に置かれているというところ、心を痛めておりまして、その一つは、どうも司法の仕組みそのものが子供たちを守る仕組みになっていないんじゃないのかということで、いろいろ勉強させていただきました。
 まず最初に、判検交流と三権分立についてお伺いをしたいんですが、判検交流、例えば身の回りの知っている人に、これ聞いたことあると言うと、ほとんど知らないと。裁判官の身分の人が検事の身分に転官して国の行政機関など勤務している、そういう制度と伺っております。
 今日は、資料一に、小学校六年生で最も多く採用されている東京書籍の社会科の教科書を一ページお出しさせていただきました。裁判所の三権分立の中の役割として、国会で決められた法律に問題となる部分があったり法律に反して政治が行われたりしたら大変なことになるので、裁判所は、このようなときに法律に基づいて問題を解決し、国の権利を守る仕事をしていますとあります。
 そんな中で、内閣法制局さんにお伺いしたいんですが、三権分立の間で権力の抑制と均衡を図る意義について御説明いただけるでしょうか。

○政府参考人(木村陽一君) 三権分立でございますけれども、通常、国家作用を立法、司法、行政の三権に分けまして、各々を担当するものを相互に分離、独立させ、相互に牽制をさせる統治組織原理のことを指すものとして使われております。
 釈迦に説法になってしまいますけれども、日本国憲法におきましては、立法権は国会、行政権は内閣、司法権は裁判所にそれぞれ属することとされております。また、それらの間には、特に内閣と裁判所ということかと思いますけれども、内閣の裁判官の任命権、それから最高裁判所には法律、命令、規則、処分に対します違憲審査権という、相互に他を抑制し、均衡を保つ仕組みが定められているところでございます。


○嘉田由紀子君 御丁寧にありがとうございます。
 内閣と司法権の間で均衡を保つというところで、この判検交流は、戦後、昭和二十年代に、法務省の言わば人的資源が不足しているということで裁判官が検事にという人事交流なされたということでございますけれども、この判検交流の内容と法的な根拠、法務省さん、御説明いただけますか。


○政府参考人(竹内努君) お答えいたします。
 いわゆる判検交流でございますが、委員御指摘のとおり、裁判官の職にあった者からの検察官への任命及び検察官の職にあった者からの裁判官への任命を始めといたします法曹間の人材の相互交流を指すものと承知をしております。
 このような判検交流でございますが、法務省が所掌いたします司法制度、民事、刑事の基本法令の立案、あるいは訟務事件の遂行等の事務におきましては、裁判実務の経験を有する法律専門家である裁判官を任用する必要があることや、裁判官が裁判官以外の法律専門職としての経験、その他の多様な経験を積むことは、多様で豊かな知識、経験を備えた視野の広い裁判官を確保するという目的のためにも意義があることから行われてきたものと承知をしております。
 法的な根拠でございますが、判検交流それ自体について定める法律の規定というのは特にないのでございますけれども、裁判官の職にあった者の検察官への任命につきましては検察庁法に、検察官の職にあった者の裁判官への任命につきましては憲法及び裁判所法にそれぞれ定められているものと承知をしております。


○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
 裁判官から検事の身分に転官して国の行政機関で勤務している者の数と法務省本省における役職、これ法務省さんから資料、提案をいただきまして、資料二と資料三、嘉田事務所で整理をさせていただいたものがございます。
 資料二と資料三見ていただきますと、こちらで、裁判官の身分から検事の身分に転官した、そして法務省で勤務されている方の人数、あるいはその課長級ポストに占める割合、また、特定の役職にそうした方々が任命され続けている傾向がございます。これ個別の問題ではないので、役職として、例えば民事局長さんあるいは参事官さんなど、ずっと、網掛けしてあるそのポストは判検交流の方が就いておられるという傾向だろうと思います。
 その辺りのところで、法務大臣、法務大臣の御認識、いかがでしょうか。

○国務大臣(上川陽子君) 法務省が所掌いたしております司法制度、また民事、刑事の基本法令の立案、また訟務事件の遂行等の実務、事務におきましては、裁判実務の経験を有する法律専門家であります裁判官を任用する必要がございます。また、これらの実務、事務に関する高度な判断を的確に行いつつ、法曹資格者を始めとする部下を指揮監督して適正に職務を遂行しなければならない法務省幹部に、法曹としての豊かな専門的知識と経験とを備えた裁判官の職にあった者を任用することにつきましては合理性があるというふうに考えております。
 委員御指摘の法務省幹部の任用状況については、その都度、適材適所の観点から適正な配置に努めた結果として、裁判官の職にあった者を充てることが続いているものと認識をしております。


○嘉田由紀子君 これはコメントですけれども、資料三を見ていただきますと、法務本省には裁判官出身者の方が三〇・五%、十八名、他の管理庁、委員会には裁判官出身の方はおられないという、それはもう事実としてだけ示させていただきます。
 そこで、衆議院の法務委員会で、ちょうど二〇一七年ですけど、金田法務大臣が、法務省で勤務した者が裁判官に復帰したときの裁判の公正中立性について、法曹は法という客観的な規律に従って活動するものであるので、その場に応じて職責を全うするところに特色があるということを答弁しておられますけれども、客観的な規律に従って活動することと、法務省職員として、職員というのは法務大臣の指揮監督の下で職務を遂行する言わば行政職員です、これは両者が抵触するような場合はないんでしょうか。あるいは、そういう場合、法という客観的な規律に従って活動することが認められるのでしょうか。法務大臣と内閣法制局さん、両方からお願いいたします。


○国務大臣(上川陽子君) 法曹は法という客観的な規律に従って活動するものでありまして、裁判官、検察官、弁護士のいずれの立場に置かれても、その立場に応じて職責を全うするところに特色があるものと考えております。
 もとより、我が国は法治国家でございます。法律による行政の原理が行政運営の基本とされるところでございまして、このことは法務行政においても異ならないものでございます。法務大臣の法務省職員に対する指揮監督はこれを前提に行われるものであります。裁判官の職にあった者が法務大臣の指揮監督下で職務を遂行することと法曹として法という客観的な規律に従って活動することは何ら矛盾抵触するものではないというふうに考えます。
 先ほど委員御指摘の金田法務大臣の御答弁ということでございましたけれども、こうした理解を前提になされたものというふうに考えております。


○政府参考人(木村陽一君) 三権分立と判検交流という人事の運用との関係というような御質問かというふうに思うんですけれども、やはり当該運用に係りますその当事者の間におきまして一義的にはやっぱり御検討いただくべき事柄であろうというふうに思っております。
 お尋ねにつきましては、申し訳ございませんけれども、内閣法制局としてちょっとお答えすることは難しゅうございます。


○嘉田由紀子君 理念的に説明することと、それと具体の、それこそ三権分立のこの理念が具体の裁判とかに言わば適用されるところには、ずれはあるかとは思うんですが、後半の方、私、常々申し上げております、子供たちが今、特に離婚の後どういう状態に置かれているかというところで、この三権分立と判検交流と関わっている事例があるのではないのかということで質問させていただきます。
 法務大臣、平成二十八年、二〇一六年に千葉の家庭裁判所松戸支部でフレンドリーペアレントルールというのが出されたんですけど、法務大臣は御存じでおられるでしょうか。


○国務大臣(上川陽子君) 御指摘の判決につきましては、報道等によりましてその概要を承知しているところでございます。


○嘉田由紀子君 上記の松戸事件の当事者である渡辺泰之参考人が、二〇一三年、平成二十五年四月十九日、衆議院の法務委員会の参考人質疑で発言をしておられます。それをちょっと今日、長いんですが、資料四としてコピーを皆様にお出しをしております。
 この資料、ちょっとかいつまんで御紹介いたしますと、特に、裁判官の役割というところで、裁判官が法をどう運用するかというので、この渡辺参考人が、裁判官は、当時ちょうど、時代背景としては二〇一三年、二〇一一年に民法七百六十六条が改正をされて、そこに子供本位の離婚後の言わば監護権あるいは親権の確定というところが議論された後です。民法七百六十六条も改正をされました。その民法七百六十六条に従った運用をしていただきたいと、渡辺参考人が当事者として、子供を連れ去られた当事者ということですけれども、審判のときに発言をしたところ、その裁判官は、法務大臣が何を言おうが関係ない、国会の議事録など参考にしたことはないとおっしゃられたということでございます。
 個別の審判の例ですから、そう大きく取り上げることはないのかもしれませんが、実は、審判に当たった担当の若林裁判官のこの発言、そしてフレンドリーペアレントルールを全く取り上げなかったということが、その後のこの子供の親権問題に大きな影響を与えているということがございますので、あえてここで取り上げさせていただきました。
 そして、二〇一四年、その一年後ですけれども、親子ネットが、やはり民法七百六十六条改正で家裁は変わったのかということを調べております。家裁通信簿という資料がございますけれども、ここでは裁判官の行動評価が大変低いと。子供の福祉にかなうように適切に行動していないと思う人が九〇%もいる。立法府が制定した民法七百六十六条の法律の趣旨が実際の裁判において裁判官が軽視しているのではないかという疑念を持つ人が多いということでございます。
 ここについては、法務大臣、最高裁判所の御認識はいかがでしょうか。

○国務大臣(上川陽子君) 平成二十三年の民法等の一部改正におきまして、民法第七百六十六条第一項が改正をされました。父母が協議上の離婚をする際に定める子の監護につきまして、必要な事項の具体例として面会交流及び子の監護の分担が明示されるとともに、これらを定めるに当たっては子の利益を最も優先して考慮しなければならないことが明示されたところでございます。この改正の趣旨でございますが、協議離婚をする当事者に面会交流や養育費の取決めを促すとともに、これらを定めるに当たっては子の利益を最優先して考慮しなければならないという改正前の民法におきましても同様の前提とされていた理念を規定上も明確にした点にございます。
 その上で、あくまで一般論として申し上げるところでございますが、面会交流の調停や審判の手続におきまして、裁判官はこのような民法の趣旨を踏まえ、子の意思や心情、生活状況、親子の関係に関する事情、ドメスティックバイオレンスや虐待の有無等の様々な考慮要素を総合的に考慮して、子の利益を最も優先した面会交流の在り方を検討しているものと承知をしております。


○最高裁判所長官代理者(手嶋あさみ君) お答え申し上げます。
 委員御指摘のような参考人の御発言ですとかアンケートにおける御意見があったということは承知をしているところでございますが、個別の事件、それから特定の団体が実施された個別のアンケートについて、最高裁事務総局として意見を申し上げることは控えさせていただきたいと存じます。
 一般論として申し上げますと、個々の裁判官におきましては、ただいま上川大臣からも民法七百六十六条の改正趣旨について御説明あったところでございますが、委員御指摘の民法七百六十六条を含みます関係法令の立法趣旨も踏まえつつ、個別の事案に応じて適切な判断を行っているものと承知しておりますが、最高裁としましても、引き続き必要な支援をしてまいりたいと考えております。


○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
 個別の事案についてはコメントできない、ただし、一般論としては七百六十六条の趣旨というのは大切なものであるということを御答弁いただきました。
 実は、この七百六十六条が改正された後であっても、具体、現場の裁判実務を見ますと、片親親権の中でどちらに監護権やあるいは親権が裁判所で決められるかというと、圧倒的に多くが、先に子供を連れ去った、あるいは継続的に同居している者、九〇%以上、これが裁判実務でございます。そういう中で、単独親権でありながら、親権を付与する基準が、理念ではあっても具体的に裁判実務でできていないと。
 江田当時の法務大臣も、継続性の原則は使ってはいけないと、フレンドリーペアレントルール含めて多様な、まさに子供の利益を総合的に考えるということを言っていただいております。そういう中で、今現実に、先日も、元将棋棋士の橋本八段、子供を連れ去られてしまった。過去十年、統計はございませんけれども、大変多くの方がこの連れ去りに遭っている。これは、継続性の原則を実務として言わば判断基準にしているのではないのかと。
 あわせて、ほかの本来の総合的な子供の利益が配慮されていないのじゃないかということが社会問題化していると私は理解をしております。裁判所の紛争解決機能に対する満足度、納得度というのが残念ながら日本では余り高くないんですけど、その辺、資料五でお示しをしております。
 もう時間もないので、最後に一言だけお願いをしたいんですが、家事事件における紛争当事者の満足度、納得度を評価、検証した資料が今のところありません。最高裁からも提案をしていただくようお願いしたんですが、民事事件についてはあるんですけど、家事事件についてはありません。この辺り、最高裁判所さんの方で今後そういうデータを取られるかどうかコメントいただき、また法務省さんの方からも、短くて結構です、コメントいただけたら幸いです。

○最高裁判所長官代理者(手嶋あさみ君) お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、家庭裁判所としまして、家事手続の運営の在り方について、利用者の御意見やニーズを把握して更なる調停運営の改善や利用促進に生かしていくということは大変重要であるというふうに認識をしております。また、民事調停事件について、御指摘のようなアンケートを実施した例があるということは承知をしております。
 この点、家事調停事件につきましては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によりまして、調停運営の在り方についても工夫が求められる中で、これを一つのきっかけといたしまして、まさに現在、各家庭裁判所におきまして、利用者の方々から求められているニーズや調停の本質的な良さを改めて見詰め直し、調停運営を一層充実改善させようと様々な取組を行っているところと承知しております。
 その過程で、まずは、例えば利用者のニーズをよく知る立場の弁護士会との間で意見交換を行うなどの形で利用者のニーズの把握に努めているというふうにも承知しているところでございます。また、各庁におきまして、家事調停あるいは家事事件の手続案内を利用された方々に対してアンケートを実施した家庭裁判所もあるものというふうに承知をしているところでございます。
 事務総局としましても、各庁において現在行われております取組の進捗状況なども踏まえつつ、家事調停を中心とした家事手続の運営の在り方に関する利用者の御意見やニーズを的確に把握するためにどのような手段が適切であるかにつきまして引き続き検討してまいりたいと考えております。


○委員長(山本香苗君) 時間が過ぎておりますので、簡潔に。


○政府参考人(小出邦夫君) お答えいたします。
 法務省といたしましては、委員御指摘のようなアンケートあるいはニーズ調査につきまして、最高裁判所との間で協議等をしたことはございませんが、今後、父母の離婚等に伴う子の養育に関する法制度の見直しにつきまして法制審議会において充実した調査審議が行われるよう、事務局を務める法務省といたしましても、関係省庁等とも連携を図りながら、必要な実態把握や情報収集の在り方について引き続き検討してまいりたいと考えております。


○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
 時間過ぎてしまって、申し訳ありませんでした。
 以上で終わります。

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