20200610法務大臣養育費勉強会に関する質問主意書・答弁書

質問第一四三号

法務大臣養育費勉強会に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

令和二年六月十日

嘉田 由紀子

  参議院議長 山東 昭子 殿

法務大臣養育費勉強会に関する質問主意書

現在、離婚後の子どもの養育のあり方について、子どもの権利を守るという視点から、面会交流の実現、養育費不払いへの対応、共同養育計画の策定、共同親権の導入など、国会における議論と専門家による検討が進んでいる。
本年五月二十九日の森まさこ法務大臣の記者会見では、「法務大臣養育費勉強会」による「我が国の子どもたちの未来のために」と題する取りまとめ(以下「今回の取りまとめ」という。)が紹介され、法務省ホームページのお知らせ一覧に掲載された。
現在、養育費の不払い問題の解消を含め、離婚後の子の養育に関して検討する会議体としては、公益社団法人商事法務研究会の中に「家族法研究会」が置かれ、法務省や最高裁判所の職員が参加している。今回の取りまとめを発表した法務大臣直轄の私的勉強会としての「法務大臣養育費勉強会」に加え、今後、法務省と厚生労働省の審議官級職員が連携して検討を行う「タスクフォース」や「法務省内検討会」の設置が予定されている。更に、本年六月二日、自民党女性活躍推進本部が、安倍総理大臣に対して、内閣府に養育費の不払い問題に対応する省庁横断の対策本部の設置を求めたのに対し、安倍総理大臣は、「しっかり提言を受け止め、関係省庁の取り組みを加速する」と応えたと報じられている。尚、法務省には、法務省組織令第五十四条に基づき設置された法制審議会の下に民法(親子法制)部会が置かれている。このように、政治家、行政官、法学者などの専門家を構成員とする会議体が数多く設立されつつあり、いつ、どの会議の場で、重要な決定がなされるのか、分かりづらい状況が生じている。そこで、以下、質問する。

一 養育費の不払い問題の解消を含め、離婚後の子の養育に関して検討する会議体それぞれの役割と、会議体相互の関係を示されたい。

二 「法務大臣養育費勉強会」のような私的諮問機関には、委員の任命や運営の透明性など、政策形成に対する影響力の大きさに対して、審議の公平性や透明性が低いとの課題が指摘されている。今回の取りまとめの内容については、法制審議会あるいは法制審議会に設置される部会において検討を行うのではなく、法務大臣の私的勉強会で検討を行っているが、政策形成過程の透明性について、どのように認識しているか。

三 現在のような複数の会議体を使い分ける検討の進め方は、国民の生活に重大な影響を及ぼす政策課題に関する論議を不透明なものとし、国民の不信を招きかねないと懸念するが、政府のご認識を示されたい。

四 森まさこ法務大臣は、本年六月二日の記者会見で、「養育費の不払いが子どもの貧困の大きな原因の一つになっているという指摘」を引用し、「養育費の不払い解消は喫緊の課題である」との認識を示されている。子どもの貧困問題の中でも、特に、養育費の不払いを解消する施策を進めるには、国民の理解と幅広い支持が必要である。そこで、養育費の確保を支援する団体だけではなく、面会交流を支援する団体などを始めとして国民各層から幅広く意見を聴取する必要があると考えるが、政府のご認識を示されたい。

右質問する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

内閣参質二〇一第一四三号
令和二年六月十九日

内閣総理大臣 安倍 晋三

参議院議長 山東 昭子 殿

参議院議員嘉田由紀子君提出法務大臣養育費勉強会に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

参議院議員嘉田由紀子君提出法務大臣養育費勉強会に関する質問に対する答弁書

一から三までについて

御指摘の「法務大臣養育費勉強会」は、法務大臣の私的な勉強会として開催されたものであり、研究者、ひとり親の支援団体等からヒアリングを行うなどした上、養育費の履行確保に関する現状の問題点を整理するとともに、今後の取組の方向性等について検討をしたものであって、その成果である「法務大臣養育費勉強会取りまとめ」(以下「勉強会取りまとめ」という。)を、令和二年五月二十九日に公表したところである。
また、御指摘の「タスクフォース」は、法務省及び厚生労働省の担当官を構成員として、養育費の支払確保のための新たな公的支援制度の在り方等を検討することが予定されており、現在、立ち上げに向けて準備中である「法務省内検討会」は、弁護士、研究者等で構成し、現行制度の枠内で実施可能な施策等を検討することが予定されているところ、これらは、いずれも、勉強会取りまとめの内容を踏まえて更に検討を進めるものである。
他方、御指摘の「家族法研究会」は、民間の団体が行っているものであり、その役割等について政府としてお答えする立場にないが、そこでは、養育費の支払確保や面会交流の促進を含め、離婚後の子の養育の在り方全般について、法改正も視野に入れた検討が進められており、法務省の担当者がこれに参加している。
これらの検討結果を踏まえ、民事基本法の改正の要否が問題になる場合には、法制審議会に諮問をして更に調査審議を尽くすこととなる。
いずれにせよ、既に勉強会取りまとめを公表しているところであり、今後も、法制審議会が開催される場合には議事録を公表するなど、透明性を確保することとしているところであり、「国民の不信を招きかねない」との御指摘は当たらないものと考えている。

四について

お尋ねの「幅広く意見を聴取する」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、養育費及び面会交流を始めとする父母の離婚後の子の養育の在り方については、国民各層の意見を踏まえた上で検討を進める必要があるものと考えている。

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