20201117法務委員会【確定稿】

令和二年十一月十七日(火曜日)

法務委員会

 

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。碧水会の嘉田由紀子でございます。
四時間に及ぶ一般質問、上川大臣、御苦労さまでございます。菅総理大臣の下、たった二人の閣僚ということで女性の閣僚二人、大変期待をしております。アメリカでは、カマラ・ハリスさんが黒人女性として初めて副大統領に就任する予定でございます。上川大臣、法務大臣として過去二回の御経験がおありですし、日本の法務行政の変革に向けてお力を発揮していただけることと大変心強く御期待申し上げます。
まず最初に、男女共同参画の家族の実現についてお伺いをいたします。
上川大臣とは、二〇〇七年の十二月に五人の女性知事環境会議というのが大阪でございまして、そのときに少子化担当の大臣として御参画いただきました。私、当時知事をやっておりまして、大きな政策はどうやったら地方自治の現場で少子化対策対応できるかということで、女性の社会、政治参画、男性の子育て、家事参画という相互乗り入れを進めてきまして、有り難いことに、滋賀県では、人口当たりの出生率、一番高いのはいつも沖縄なんですけれども、全国二番目までいっとき回復をいたしました。
ただ、地方自治で子育て支援、子供の幸せ、家族の幸せを進めてきた政策の中でどうしても越えられない壁がこの民法の改正問題でございました。子供の貧困、そして一人親家庭がどんどん増える、そういう中で、私自身、昨年の八月に参議院にお邪魔してから法務委員会でお世話になっております。
大臣もよく御存じのように、国際的に見ますと、日本のジェンダーギャップ指数二〇二〇の順位、政治分野では世界百四十四位です。政治や経済活動は男性、子育て、家族活動は女性という極端な男女役割の分断意識が明治民法以来の離婚後の単独親権を疑問なく国民も受け入れておりまして、そして、男性や父親が子育てや家族生活から排除される傾向に拍車を掛けているのではないでしょうか。
ただ、この四月、法務省の国際調査、結果が出ておりますけれども、いまだに単独親権しか選ばせない国は二十五か国中三か国、日本とインド、トルコ。インド、ヒンズー教、トルコはイスラム系の影響ということで、先進国の中では日本だけ、残り二十二か国は基本的に共同養育、共同親権を選べる国となっております。
実は、歴史的に振り返ってみますと、江戸時代、意外と日本は男性が子育て、家族生活に参画をしておりました。明治以降の近代化の中で、男性は軍事、政治、経済、女性は銃後の守りで家族、子育て役割と分断をされてしまい、そして、明治民法の古い伝統を受け継いだまま、今の日本の離婚後単独親権制度が残っております。親権を失う父親は最新のデータですと九三%、つまり、十人のうち九人以上の父親が子育てから排除され、分断と孤独にさいなまされているわけです。
アメリカの大統領選挙になぞらえますと、男女、父母がもっともっと分断ではなく融和的に子育てに共同して当たるべきと思います。そして、もっと男女共同参画の家族の在り方が少子化に悩む今の日本に求められていると考えます。午前中から真山議員、そして伊藤議員、また今ほどの伊波議員のお話にもありましたこの単独親権か共同親権か、この問題は子供さんにとって大変大事なテーマだと思います。アメリカでの留学経験もおありの大臣の御認識はいかがでしょうか。

○国務大臣(上川陽子君) 冒頭、嘉田委員から三度目ということでエールを送っていただきまして、心から感謝申し上げます。
また、かつて嘉田委員が知事に御就任されていた折に、全国でも四名の女性知事ということで、私もその当時大臣職を務めていたということもありまして、大変心強く意見交換をさせていただいたことを今でもよく覚えている状況でございます。
その当時におきましても、この女性の政治参画と、そして男性の方の育児参画が両輪となっていかないとなかなかこの順位も上がらないんじゃないかというような議論につきましては、その後の委員が知事として様々なお取組をされてきたことを、その後もフォローというまではいきませんけれども、拝見させていただいて、施策の打ち出し方によりまして大きく社会へ関わっていく可能性があるということも私自身見させていただきまして、力強く思ったところでございます。
まさに少子の時代でございますし、また、海外との関係性につきましても、これまで以上につながりを深めていく時代ということも事実であります。そういう中におきまして、この親子の関係、また子育ての状況を踏まえての今の現状の中での問題ということについて真正面から捉えていく必要があると私自身も認識しているところでございます。
子育ての状況につきましては、諸外国の状況と比較しても、父親の子育てへの参画、参加が少ないことや、また父母の離婚後に子供と離れて暮らすこととなった親と子供との交流が十分でないということを指摘する声があることにつきましては承知をしているところでございます。
その上で、一般論として申し上げるところではございますが、父母の離婚後も父母の双方が適切な形で子供の養育に関わるということにつきましては、これは、子供の利益という観点はもちろんでございます、同時に男女共同参画社会の実現という観点からも非常に重要であると認識を、考えているところでございます。
父母が離婚をした後の子供の養育の在り方につきましては、御指摘の親権制度の問題も含めまして、現在、法務省の担当者も参加しております家族法研究会におきまして、民事法制の観点から検討をされているところでございます。
私といたしましても、これら子供の養育の在り方に係る極めて重要な問題であるということでございますので、チルドレンファーストという、少し横文字を使うことの意味は、それだけ皆さんに関心を持ってもらいたいという意味で片仮名で表記させていただいておりますが、子供の最善の利益を図ると、これが趣旨でございますので、そうした点に関しましての検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。大変心強い方向をお示しいただきました。
今ほど大臣も言及なさいましたように、所信的挨拶では、両親が離婚した後の親権制度、養育費、面会交流の問題など、父母の離婚に伴う子供の養育の在り方については、子供の最善の利益を図るチルドレンファーストの観点から検討することが重要と所信を述べていただいております。
親権制度と養育費と面会交流、これはセットで検討しないといけないと思います。例えば、養育費不払問題、今いろいろ問題になり、また社会的関心も高まっております。先ほどの伊藤議員も、二四・三%しか、片親、母親の方は受け取ってないという問題がございましたけれども、養育費不払問題をめぐっては、面会交流もできずに養育費だけを支払することはできないと多くの別居親は発信をしております。
その点について、上川大臣、どう思われますか。

○国務大臣(上川陽子君) まず、御指摘の問題につきまして、民法上におきましては、この面会交流の実施の有無とそして養育費の支払義務の存否につきましてはそれぞれ独立の問題であるという、そうした整理をされているところでございます。具体的には、父母の離婚後に非親権者と子が面会交流を実施していない場合であっても、それを理由として養育費の支払義務が影響を受けることはないと、こういう認識でございます。それぞれ独立した立場で、そういう位置付けで整理をされているところでございます。
もっとも、御指摘のとおり、子に会うことができない中で養育費の支払をしなければならない状況があるという方々の中には、親の心情としては納得できないと、こういう思いを抱かれる方がいらっしゃるということにつきましては理解するところでございます。また、実際にも、面会交流が円滑に実施されている場合には養育費も継続的に支払われているということが多いという、そこが関係があるという、多いということで、そうした意味におきまして、養育費の支払と面会交流との間には事実上の相関があるという御指摘もあると認識しているところでございます。
子の養育に必要な養育費の支払を確保するために、支払義務を負う方が子供のために自ら進んで養育費を支払う環境を実現すること、これ非常に重要であると考えておりまして、家族法研究会におきましては様々な論点を整理しながら御議論いただいているところでございますが、この父母の離婚後の子の養育の在り方につきまして幅広い検討が行われているものというふうに承知をしているところでございます。

○嘉田由紀子君 御丁寧にありがとうございます。
親の心情に即して見ていただいたときに、本当に別居親も苦労しながら、身を粉にして働きながら養育費を言わば払っているという、豊かな男性ばかりではありません。特に、片親が残され、連れ去られたお父さんなどは、もう仕事を辞めざるを得ないとか精神的に病んでしまうとか、そういう方もたくさんおられますので、養育費の支払自身は大変な努力の結果であろうと思います。
そういう中で、共同養育計画策定の法的な義務化も取り沙汰されておりますけれども、これ根本に返ってみますと、八百十九条、民法で、あなたは親ではありませんと言われて法的に引き離される、その上で養育費の取決めを義務化されるというのは、法制度の整備として、国家としても余りにアンバランスではないでしょうか。バランスを欠いた判断と言わざるを得ません。そういう意味では、チルドレンファーストで子供の最善の利益を実現するためには、離婚後の父母が共同して子供を養育することができるよう民法を改正し、離婚後の共同養育、共同親権を認めた上で、養育費の取決めの義務化あるいは面会交流の進展が実現できると判断しますが、法務大臣の御認識はいかがでしょうか。

○国務大臣(上川陽子君) 子の養育費の不払解消につきましては、子供の日々の生活に直結するものであるということから、法務省内に設置されました養育費不払い解消に向けた検討会議等におきまして、協議離婚時に養育費に関する取決めを確保するという観点から、御指摘いただいた様々な点も含めまして論点が取り上げられていると承知をしているところでございます。
私といたしましては、委員御指摘の父母の離婚後の親権制度やまた養育費等の問題につきましては、子供の利益を図るために、父母の離婚後の子供の養育をどうあるべきかという、こうした原点に立ち返って検討すべきものではないかというふうに考えているところでございます。
法務省の担当者も参加しておりますこの家族法研究会でございますが、現在、父母の離婚後の親権制度の在り方や、また養育費及び面会交流について取決めを確保する方策も含めまして、父母の離婚後の子の養育の在り方につきまして幅広く総合的な観点から検討が進められていると承知をしております。私としてもその検討をしっかりと見守ってまいりたいというふうに考えております。

○嘉田由紀子君 今ほど家族法研究会、何度か言及いただきましたけれども、私は大変この研究会の結果に期待をしていたんですが、この九月二十九日に提出されたまとめ資料では、離婚後の子の養育の在り方につき、現時点で方向性を示そうとすることは相当でないとの見解が示されています。つまり、家族法研究会、一年掛けて、結局方向が決められないと、何も決めないことにしたということではないでしょうか。
上川大臣が法務大臣なさっておられた二〇一八年、東京都目黒区の船戸結愛ちゃん虐待事件が起こりました。結愛ちゃんは片親親権の下、実の父親、その親族から切り離され、香川県に住んでいらしたんですね。そして、まま父に虐待され死に至らしめられました。最近、結愛ちゃんのお母さんが獄中からの手記を公表していますけれども、言わば新しい夫のマインドコントロールの下、子供さんも守れなかったと。本当につらい、読んでいて涙が止まりません。結愛ちゃん事件をきっかけに上川大臣が共同親権の導入の方向を示していただきました。


二〇一八年七月十五日の読売新聞紙上で、二〇一九年には法制審で議論するとの記事が出たことがあります。本日の資料で配らせていただいておりますけれども、児童虐待をなくすためにも共同親権の議論は早急に進めなければなりません。

今、毎日四百人の子供が離婚による親子分断に直面しております、一年間に二十一万人。昨年は八十六万人しか子供が生まれていないんですから、四人に一人の子供が両親の離婚により片親ロスの状態におとしめられております。
一人親家庭の子供の貧困、大変深刻です。特に、コロナ禍での一人親家庭の貧困、先日もテレビで紹介されておられました。一刻でも早い対応が求められています。児童虐待、子供の貧困をもたらす要因の一つとなっている、もちろん要因は複数ですけれども、かなり大きな要因の一つとなっているこの片親親権の問題、どのような手順を経て結論を出す御予定でしょうか。その時間的見通しをお聞かせいただけたら幸いです。

 

○国務大臣(上川陽子君) 先ほど申し上げました家族法研究会におきましては、父母の離婚後の子の養育の在り方につきまして幅広く検討がされている状況でございます。現在、各論点について二巡目の議論が行われているものと承知をしております。
父母の離婚後の子の養育の在り方、それに関する制度的方向性につきましては、様々な意見、課題の指摘がございまして、現時点におきまして取りまとめの時期につきましては申し上げる状況でないということにつきまして御理解はいただきたいと思うんでありますが、この問題につきましては、子の利益に関わるものであることから、私から法務省の担当者に対しましては、子供の利益、目線を大事にしながらスピード感を持って積極的に議論に参加するように指示をしているところでございます。
また、家族法制の在り方やその見直しは、子供に対しまして極めて大きな影響を与えるものでございます。また、それによりまして子供の健やかな成長が阻害されるといった事態が生じることのないように、実態に基づいたファクトベースの議論というものも進めていくことが重要ではないかと考えておりまして、現在、法務省といたしましては、協議離婚に関する実態調査や、また未成年期に父母の離婚を経験した子供さんの意識に関する調査についても準備を進めているところでございまして、そうした取組につきまして充実した調査を実施してまいりたいというふうに思っております。
いずれにいたしましても、制度の見直しに向けて更に検討を進めることとなった場合には法制審議会への諮問が必要になるというふうに考えております。諮問の要否あるいは時期等につきましては、スピード感を持ちつつも、家族法研究会における法的な論点整理、これの状況も踏まえながら、法務大臣として適切な段階でしっかりと判断してまいりたいというふうに考えております。

○嘉田由紀子君 この議論が始まってそれこそ十年、その間一年間二十万人だと二百万人の子供が片親ロスに直面しているという、本当に日本の子供たちの未来に、そして今、経験をした、大人になっている方にも大変大きな問題です。
今ほど大臣が協議離婚の実態、実は日本は九割協議離婚、これも子供の養育計画なりあるいは養育費の計画がなくても、まさに判こ一つで、これからは判こも要らない、離婚ができる、九割、そんな先進国はございません。もっともっと離婚に対しては、子供への責任、セットで扱われているのが先進国です。それから、離婚を経験した子供さんの声も聞いていただくということ、これ大変大事でございます。是非とも調査結果期待をしております。
つい先日ですけれども、今日皆さんにお配りしておりますけれども、二〇二一年民法改正、男女平等子育ての幕開けということで、子育て改革のための共同親権プロジェクトの皆さんが国会内で院内集会を開催され、要望書を関係国会議員に手渡されました。離婚により子供を連れ去られた父、母、あるいは孫に会えなくなった祖父母、孤独と苦しみを抱えながらなかなか顔を出して発信できなかった。離婚自身がある意味でスティグマになってしまう。そして、自分が言わば大変苦しい中で、そこを半年以上準備して当事者二十四名が顔を出してくださいました。百ページを超える共同親権バイブルとも言える提言書を編集し、七百名を超える全国会議員に配ってくださいました。同時に、賛同者を募るホームページも作っております。大変勇気を持って記者会見を行いました。是非、このお手元にあるURL、アクセスをしていただきたいと思います。
幾つかの声を紹介させていただきたいと思います。
例えば、リーダーであります松村直人さん、本プロジェクト発起人ですけれども、ITコンサルタントをやって夫婦共稼ぎで子育てに深く関わってきたのに、離婚後、家庭裁判所が関わるようになり、月一回しか子供に会えない。単独親権制度は奪い合い、分断のシステムであり、争いと犠牲者を生む、すぐにでも単独親権制度を廃止して、つながりやきずなを根源とした共同親権制度に転換してほしい。
川崎市の佐藤創さんは、二〇一三年に結婚、子供を授かって、そして二〇一八年、突然妻の実家に子供を連れ去られ、今ようやく月一回しか会えない。
それから、まどかさん、母親でありながら子供を奪われた日々はまさに社会から自らの存在を抹消されたような思いだ。私は存在しない。単独親権で子供から親を奪うということは親そのものも抹殺される。存在を拒否される。子供のいない母親はつらい。誰かの存在を消し去ることであり、人間否定であるとまで言っておられます。
工藤裕加さんは、祖母の立場から、息子夫婦の離婚に伴い孫と会えなくなってしまった。親族みんなでかわいがってきた孫に会えなくなってしまった。この段階まで、自分は単独親権というのが日本にあることを知らなかったということで、今の日本の制度はおかしい。
滋賀県から参加した金光正治さんは、病気や失業で困難なときには行政の支援があるのに、家族の困難には行政の支援がない。共同養育、共同親権の制度の下で、問題がある親であっても仲よく暮らせるような、そういう前向きのサポートをしてほしいということでございます。
もう時間がないんですが、上川法務大臣、この提言書にあるような当事者の声を聞かれていかがでしょうか。短くて結構ですので、感想を聞かせていただけたら幸いです。

○国務大臣(上川陽子君) ただいま委員から、婚姻中は子供と大変深く関わってきたにもかかわらず、離婚を契機として子供との交流が限られてしまったという方々の声、実際のお名前とともに御紹介をいただきました。家族に関わる非常に私的な事柄であるにもかかわらず、実名で声を上げられたということについては大変重い覚悟ではなかったかなと推察するところでございます。
家族の関係につきまして、また、特に子供の健やかな成長は誰もが望むところでございますので、そうした子供に対しての健やかな成長を支えるための様々な取組ということについては、力をしっかり入れて、スピード感を持って取り組んでまいりたいというふうに思っております。

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
ちょうど二十五分でございました。どうもありがとうございます。

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