20200402参議院法務委員会【確定稿】

○嘉田由紀子君 碧水会の嘉田由紀子でございます。
まず第一問目は、先ほど山添議員が取り上げていただきました滋賀県の湖東記念病院の元看護助手、西山美香さんの大津地裁の無罪判決でございます。
一昨日、本当に、地元の、また私自身は当時からずっと知事を務めておりましたので、この湖東事件の行方については大変注視をしてまいりました。何よりも、法と証拠に基づいた裁きと、本来あるべきところから外れていたんじゃないのか、そこを今、専門の立場から山添議員が指摘してくださいましたけれども、本来、事件性がなかった、そこを、証拠を十分に地元の警察が検察に示さなかった、この証拠開示の問題、大変大きいと思います。
それから二点目は、西山美香さんがある意味で供述弱者であったというところに対して、形式的な自白、そこを証拠の原点に据えたということ、ここも大問題だと思います。
一昨日の大津地裁、無罪判決のときの大西直樹裁判長の説諭、言わば言渡しの後のお話は法廷内の感動を呼ぶ大変すばらしいものだったということを関係者から伺っております。特に、大西裁判長は、時間を巻き戻すことはできないが、未来を変えることはできると、今後の方向性を示しております。具体的には、刑事司法制度の改善に結び付くように、自白の信用性や任意性を否定し、問われるべきは捜査手続の在り方であるということで、この検証を提案をしておられます。
また、弁護団長の井戸謙一さん、実は弁護団始め地元の応援団の方たちがずっと西山さんを支えてこられました。その弁護団長の井戸謙一弁護士も、県警や検察はこれを教訓として、組織として問題点を改めて検討してほしいと要望されておられます。
十五年以上も無実の罪を着せられた西山さんの人生、今、四十歳です。本当に青春を奪われてしまった、その想像するに過酷な余りある人生に涙を禁じ得ませんが、西山さんのこの悲しみに報いるためにも、検察の言わば再調査、必要ではないかと考えております。
そこで法務大臣にお聞きしますが、過去の冤罪を調査、検証し、将来の誤判、誤った判断を防ぐための検証部門を法務省内につくり、定期的に国会に報告するような仕組みが必要ではないでしょうか。先ほど、山添議員も検証の、内実をということを強く求めておられました。無理だというようなことも今伺っておりますけれども、あくまでも三権分立の中であっても国民を代表する国会に対して報告をする、そういう取組、今必要ではないでしょうか。法務大臣にお伺いいたします。

○国務大臣(森まさこ君) 大津地裁が三月三十一日にお尋ねの事件について無罪判決を言い渡したことについて、検察当局においては、有罪判決を受け服役された方に対し再審公判において無罪とする判決が言い渡される事態に至ったことを厳粛に受け止めていることを承知しております。
その上でお尋ねに答弁いたしますと、個別具体的事件について、裁判所以外の機関が誤った判決に至った原因の究明等をする仕組みについては、憲法上認められた裁判官の職権行使の独立性の観点から問題がないかどうか慎重な検討が必要であります。
また、個別具体的事件における検察当局の捜査・公判活動上の問題点の検証を検察当局以外の機関が行うことも、検察権の行使が裁判官の職権行使の独立性に密接に関連することから同様の問題がございます。
さらに、個々の事件における捜査、公判上の問題点を検討したり、誤った判決に至った原因を究明したりする過程においては、当然のことながら、当該事件の関係者のプライバシーや具体的な捜査活動の内容、手法等に触れることとなるため、一般に、そのような検討の内容等を公表し、対外的に明らかにすることは相当でないと考えております。したがって、御指摘のような調査、検証の仕組みを設けることについては慎重な考慮を要すると考えます。
いずれにしても、あくまで一般論として申し上げますが、検察当局においては、無罪判決があった場合等には当該事件における捜査・公判活動の問題点について検討をするほか、捜査、公判に関し、必要に応じ検察庁内で勉強会を開催したり、各種の会議において報告したりするなどして、検察官の間で問題意識を共有し、反省すべき点については反省し、今後の捜査、公判の教訓としているものと承知しております。

○嘉田由紀子君 御丁寧にありがとうございます。
組織としては、公式にはできないけれども、勉強会やあるいは経過をフォローするということはお答えいただきました。
しかし、私たち国民としては、いつこうやって無実の罪に着せられるかもしれない。国民を代表する国会に対して、この西山さんの湖東記念病院事件だけではなくて、様々な冤罪、誤判があるわけでございます、そういうところに対して、国会として、まさに法務の本来の役割としてチェックをできるような、あるいは報告を受けるような、そういう仕組みについては、今後もまた皆さんと相談をして求めていきたいと思っております。
時間もありませんので、次に、二点目の、いつも申し上げております子供の人権、特に離婚後の人権について。
まず、日本が実子誘拐をしているということ、ハーグ条約に反しているのではないのかと指摘をされております。前回、三月二十四日も問題提起しましたが、EUの二十六か国、フランス、オーストラリアなどからの要望ですけれども、この日本の実子誘拐と日本の司法の実態、繰り返し海外で報道され、対日感情が悪化していると聞いております。
この具体的な日本人による実子誘拐、どう報道されているんでしょうか。そしてまた、その報道に対してどのような対応を行っているのでしょうか。外務省さんにお伺いいたします。

○政府参考人(大鷹正人君) お答え申し上げます。
海外メディアにおきましては、日本人による子の連れ去り事案に関しまして、日本の司法制度に批判的な内容を含むものを含めまして様々な報道が見られると承知しております。
これら報道につきましては、政府として注意深くモニタリングを行うとともに、メディアに対する説明などを通じまして日本の制度等の正しい理解促進に努めているところでございます。引き続き、正確な対外発信にしっかり取り組んでまいりたいというふうに思っております。

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
引き続き正確な対外発信ということですが、事実、既に大変厳しい指摘がなされているということ、これをハーグ条約の中央当局として真剣に受け止めていただきたいと思います。
このような国際社会の評価、法務大臣としてはどう認識なさっておられますか。

○国務大臣(森まさこ君) 法務省においては、法の支配や基本的人権の尊重といった基本的価値を国際社会に確立させるための司法外交を推進しております。その際、我が国の司法制度について正しい理解が醸成されるよう努めていくことは重要な課題であります。
我が国の家族法制の在り方については国内外に様々な意見があるものと承知しておりますが、海外の報道の中には、我が国の司法制度についての不十分な理解を前提としているものもあると承知をしております。
我が国の司法制度に対する正しい理解を得るために、外務省と連携しながら、積極的な国際発信や各国の司法関係閣僚との対話などを積極的に行ってまいりたいと思います。

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
国際的に、我が国の制度に対する外からの不十分な理解ということでございますけれども、先ほど来の高良議員の夫婦別氏、選択さえできない、これは世界中で、先進国で日本だけでございます。日本が、特に女性の社会参画、世界で百四十位、百五十位というそういう状況の中で、日本は日本のやり方があるんだということが通用するのかどうか。もうお答えは求めませんけれども、そこは、外務省さん、法務省さん共に深く受け止めていただきたいと思います。
水の中にいる魚には水が見えません。今、世界がどうなっているのか、コロナウイルスの問題もそうですけれども、世界が全てつながっている中で、日本だけは、日本の事情があるんだ、明治民法の家制度をそのまま維持するんだというようなことは通用しないということを改めて指摘をさせていただきます。
さあ、そういう中で、ハーグ条約ですけれども、このハーグ条約の柱は、元々、国際的に連れ去ってしまった、あるいは連れ去られた、その連れ去られた後、連れ去った後、元の国に戻すという、元の居住地に戻すという約束と、もう一つは、子供と面会交流あるいは交流できる権利、この二つが柱でございます。その基には、夫と妻が離婚をしても、子供にとっては父親、母親と交流できる、そしてそちらからより手厚い養護が受けられるという、そういう元々の基本理念でございます。
その中で、このハーグ条約、批准するのに、二〇一一年から二〇一四年にかけて、民主党政権から自民党政権にかけてでございました。衆議院、参議院で大変丁寧な議論がなされております。今、私もそれを見返させていただきまして、このハーグ条約で救われた子供がどれくらいおられるのか、具体的に、全体のケース数、あるいは親が子に具体的に交流できたケース数などをお教えいただけたら幸いでございます。

○政府参考人(山中修君) お答え申し上げます。
二〇一四年四月に我が国についてハーグ条約が発効して以降、本年三月までの六年間に、外国への子の返還に関しましては、援助申請が百三十件ございまして、援助対象と認められた百十二件のうち四十一件について子の返還が実現し、三十六件について子の不返還が確定しております。
また、日本への子の返還に関しましては、援助申請が百七件ございまして、援助対象と認められた九十五件のうち四十二件について子の返還が実現し、二十六件について子の不返還が確定しております。
面会交流につきましては、同期間に、日本にいる子との面会に関しましては、援助申請が百十一件ございまして、援助対象と認められた九十四件について援助を行いました。また、外国にいる子との面会に関しましては、援助申請が三十二件ございまして、援助対象と認められた三十一件について援助を行っております。
これらの中には、両当事者による話合いや裁判手続を経て非同居親と子との直接面会が実現した事案やビデオ通話による面会、ウエブ見守り面会交流が実現した事案などがございます。

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
日本全体で、毎年それこそ二十一万件もの離婚があり、そして国際結婚も四万件というような形の中で、今の百十一件、そのうち四十五件が返還され、そして三十五件がという、その件数の数を見ると少ないと思われるかもしれませんが、今まで法の壁があり、そして国際的な壁がある中で、これだけの方が救われたというのは、私はハーグ条約、大変、批准をして、そして実行していただいていることを有り難いと思います。
既に時間が来てしまいましたので、申し訳ありません、国内的な問題で、養育費の問題、また家庭裁判所での面会交流の問題などはまた次回にさせていただきます。
どうもありがとうございました。

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