7月17日 鳥取県智頭町訪問記 その1(寺谷誠一郎前町長の町づくり談義)

鳥取県智頭町訪問記(その1 寺谷誠一郎前町長の町づくり談義)。
「お待たせしました。いよいよ田舎の出番です」。ポストコロナの時代、日本はどう行くべきか。
東京一極集中を緩和し、テレワークなどを活用して、日本各地に家族連れの若い人たちが移住できることは大事な方向。もちろん琵琶湖をど真ん中にかかえる滋賀県もそのひとつの候補地です。「過疎、過密から“適疎のほどほどの田舎”の時代へ」。私がどうしても紹介したかったのが、鳥取県の智頭町です。4回にわたり紹介します。7月15日。(また長いです。2000文字)。
「森を活用して、子育て中の若い家族が住みつき、森のようちえん」を運営。日本各地から森のようちえんにはいりたくて移住者があつまるす智頭町。すごい場所だ。7月初旬、30年来の知り合いの鳥取大学の家中茂特任教授の企画とご案内で智頭町を訪問。(その1:寺谷誠一郎前町長の町づくり談義、その2:森を生業と生活に活かす、その3:森のようちえんこそ子育ての原点、その4:町まるごとホテルへ!田舎と食を活かす女性経営者の挑戦)。4回にわけて紹介させてください。
 鳥取県の東南に位置する智頭町(7800人)は、93%が森林で「杉のまち」として知られる。「みどりの風が吹く疎開のまち」。寺谷誠一郎前町長(76歳)が掲げた町のキャッチコピーだ。「人間が追いまくられるストレス社会。そんな中、ふーっと息抜きできる場所」という意味で「疎開」を用いた。この6月に町長職を金児(かねこ)町長にゆずった前寺谷町長に、奥さま、お嬢様とともに経営する、水と緑溢れる山菜料理の「みたき園」でお話をうかがった。
1997年に町長に当選。なぜ町長に?当時、「みたき園」を経営しながら、鳥取県青年会議所の理事長をしていた。ある時、日本海新聞社の社長によばれて、政治的に混乱している智頭町の町長選挙に出ろといわれ、固辞したが、翌日の新聞に「寺谷出馬」と出されてしまった。ひけなくなった。社長からは「頭をさげる」「一軒一軒まわる」「汚いお金を使わない」という3つが政治家には必要だと言われた。それを一貫して守ってきた。実際に一軒一軒頭をさげてまわったのは、奥様の主導だったという。それで激戦を勝った。
町長になって最初に手掛けたのは、智頭町の中心部に日本でも五本の指にはいる山林王の木造屋敷「石谷家」屋敷があった。その観光化だった。当時当主が住んでいた家に「この家から出ていってください!」と無茶な要望をして日参。2年後の1999年にまずは「5日間解放」という一歩を踏み出した。1万人が来訪、1400坪の屋敷とその建物、庭の素晴らしさに感動した町民の思いにこたえて、2000年には当主が屋敷一切を町に寄贈。2001年には一般公開が実現。
2002年から2004年にかけて、智頭町は鳥取市との合併をめぐって大揺れに揺れた。町長、町議会、町民による住民投票結果がねじれにねじれた。2004年に寺谷町長は辞職した。しかし2008年、寺谷さんに町政に戻ってほしいという若者が2500名の署名をあつめて町長選出馬を要請。草の根型選挙で再度町長に就任。住民の草の根の思いとアイディアを活かす「百人委員会」設置。「要求型から提案型へ」「金がないなら、知恵を出せばいい」。町民が林業や教育など興味のある分野について各種のアイディア提案。良いアイデアには、直接予算をつけた。
後から紹介する「森のようちえん」や森づくり運動などの母体が生まれてくる。2020年6月に町長を退任するまでに寺谷町長は「自分には行政のことは何も分からないので、職員には好きにやれと指示をした。ただし責任は全て自分が取るとも伝えている」という。見事なリーダーシップだ。その魂の根っこは何事にも洒脱な遊び心をこめて、水や森や自然の価値をとことん引き出すという哲学と思想だ。
若い時代から奥様とはじめた「みたき園」という山菜料理の場には寺谷さんの遊び心があふれている。入口には「新鮮な空気一呼吸一円頂きます。但し本日のお客様に限り無料とします」の看板!「天空の瀧」という川沿いの瀧は、川からくみ上げた水を流して遊ぶ。杉の巨木の根もとには、お地蔵様の姿を埋め込む。比叡山延暦寺の開祖、最澄が巨木から薬師如来のご本尊を導きだしたように!小川には「メダカの学校」がザルかごに泳ぎ、山菜料理は、鹿肉のジビエ料理からトチ餅は、手びき大豆の黄な粉をまぶす。
今、都会のストレス社会が加速して、心にも身体にも元気がない人が目立つ。2011年の原発事故を契機にして、立派なように見えていても、ニセモノが多い世の中となっている。これからは、フィールドを持っているほうが強い。田舎には、森がある。空気がある。水がある。どれもホンモノ、田舎の出番、という。日本には今、山の中に風が吹いているという。都会の人に人間性を取り戻してもらう。智頭町は、そのお手伝いができる、ホンモノの田舎であり続けたいと。ポストコロナの時代、「お待たせしました いよいよ田舎の出番です」
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