20200603参議院東日本大震災復興特別委員会【確定稿】

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。碧水会の嘉田でございます。少数会派にも時間をいただきまして、ありがとうございます。
私、今回の復興庁設置法等の一部を改正する法律案、基本的に賛成ですけれども、ただ、やはり、やり残した問題として、復興防災省が必要だろうということで質問させていただきます。
まず、これまでの議論少し振り返らせていただきますが、昨年の第百九十八国会、参議院の予算委員会の公述人の五百旗頭真氏が防災復興庁の提案をしておられます。三点です。一点目は、災害が起きる前から備えるための責任組織。復興庁は、実は三・一一のときもできるまでにかなり、一年近く掛かってしまいました。ですから、できる前、起きる前に。二点目は、警察、消防、自衛隊など、各機関を束ねる総司令部的な専門的な母体。三点目が、内閣府と復興庁のノウハウを持続的に蓄積をして、次なる災害に備える人材育成と。
五百旗頭先生は、元々は国防の専門家ですから、言わば災害からの安全保障ということを御提案いただきました。また、京都大学の元防災研究所長の河田惠昭氏、私も知事時代から随分お世話になりましたけれども、防災省のことをずっと一貫して言っておられます。さらに、この五百旗頭氏の提案の後、本日もおられますけれども、杉尾議員、川田議員、また谷合議員、衆議院の方では玄葉議員、阿久津議員などが活発な議論を進めてきておられます。


そういう中で、この附帯決議にある五年後には組織の在り方を検討すると、協議中ですけれども、まだ決定されていませんが、そこのところも含めて、やはり復興防災省の必要性ということの議論をさせていただきます。
また、全国知事会も昨年七月に提案をしております。今日、資料一として、全国知事会が復興庁と内閣府をこういうふうにまとめたらどうかという図を出してくださっていますので、資料一として添付しております。


さらに、土木学会が二〇一八年に国難をもたらす巨大災害対策についての技術検討報告書を出しておられます。これは、一部それがテレビの題材にもなっていまして、本当に慄然とするものですけれども、例えば南海トラフ地震、一千二百四十兆円の経済損失が二十年間続く、ここにきちんとハード対策を入れたら四割以上縮減できる。そして、死者数も二十三万人ほど予測されているんですけれども、うまくリスクコミュニケーションを図ったら四分の一縮減できる、四分の三にできるというような提案もしております。
防災省については、いろいろできない理由、屋上屋を重ねるとか、あるいは既存の省庁との役割分担難しいとかあるんですけれども、ここは腰を据えて、数年掛けてでも議論を積み上げていけたらと思っております。
それで、最初の質問ですけれども、まず、既存のいろいろな災害でどういう死者が出たり被害があるのかということで、今日は河川行政についてお伺いいたします。
二〇一八年七月初旬の西日本豪雨、全国観測史上最大の豪雨、百二十三か所で起きてしまいました。そのときに、四国の愛媛県肱川の上流部に野村ダムというところがありますが、ダムの放流が関わり五人が命を落としてしまわれました。
なぜダム直下で放流水により死亡者が出たのか、それに対してその後どのような対策を立てたのか、国土交通省さんの方にお願いをいたします。

○政府参考人(塩見英之君) お答えを申し上げます。
平成三十年七月豪雨ではこれまでに経験のない異常な豪雨となりまして、これによりましてダム下流で甚大な被害が発生したところでございます。
このため、野村ダムのある肱川では、四国地方整備局が検証等の場を設置いたしまして、住民の避難行動につながるより有効なダム情報の提供、あるいはより効果的なダム操作につきまして取りまとめを行いますとともに、国、県、市、町が連携をいたしまして、ハード、ソフト両面から流域の防災・減災を図るプロジェクトを取りまとめて実行に移しているところでございます。
具体的には、野村ダム下流の河道掘削等によりまして緊急的に河川の流下能力の向上を図りますとともに、昨年六月には野村ダムの利水のための貯留水を事前放流いたします体制確保を図ったところでございます。また、ダムの改造によって増えました下流の鹿野川ダムの治水容量を活用いたしまして、野村ダムが通常の洪水調節をしながら放流する量を増やしまして、より大きな洪水で調節、洪水調節ができるようなダム操作規則の改定も行ったところでございます。
またさらに、住民避難のためのダム情報につきましても、ダムが満水に近づきまして、ダムからの放流量をダムへの流入量と同じ程度にするいわゆる緊急放流に移行する際の情報の充実ということで、ダム放流時のサイレンの回数を増やしたり、切迫感が伝わるようなアナウンス文章への見直し、また、平時から浸水リスクを認識していただくためのハザードマップの作成等に取り組んでいるところでございます。
こういった取組に加えまして、今般、全国的な取組の一環といたしまして、野村ダムの事前放流を更に拡大するということでありますとか、また今後は、肱川の河道整備によります流下能力の向上、これに応じまして、ダムからの放流量を一層拡大できるような対策についても取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。

○嘉田由紀子君 御丁寧にありがとうございます。
今のキーワード、一つは事前放流ということで、資料二として新聞記事を出させていただいておりますけれども、うまく気象情報を活用して三日前から事前放流をしておくとダムの治水容量が全国でほぼ倍になると。これ、大変画期的な、私は、ダム操作のコペルニクス的転換と、よくやられたなと、ここは感謝をしております。

実は、ただ、この事前放流とかいう対策は、既に河川法の中には入っていたんです。ただ、予防的措置は本当に難しい。私が今これだけ防災省、復興省を提案をしているのは、日本の多くの行政の施策の中で、予防的政策って大変難しいんです、いろんな利害調整がありますから。だから、死者が出てしまった、事故が起きた、だからこれをしなきゃという事後対策は合意形成しやすいんですけれども、事前には合意形成しにくい。
その一つの例を次にお示ししたいんですけれども、皆さんの資料三のところに河川法五十二条というのがございます。


実は、私、二〇〇八年、滋賀県の知事時代に、この河川法五十二条を使って、当時、滋賀県内に大戸川ダムというのが計画されていました。実際に、費用負担は大阪府と京都府が中心だったんです。ただ、ここの大戸川ダムの治水容量を、すぐ近くにある喜撰山ダムという関西電力の利水のダムです、この喜撰山ダムで活用したら大戸川ダムの必要性は少なくなるんではないかと。これは、大阪府の知事、京都府の知事、滋賀県、三知事が要望したんですけど、結果的には門前払いでした。できなかったんです。そういうふうに、それは当然なんですけれども、関西電力さんの了解が得られないといけない、利水用の。そこのところがこれまではできなかったんですけど、今回こうして全国的に事前放流を制度化なさったというのは大変大事なことだろうと思います。
ですから、予防的に命を守るというそのことを省庁の設置の目的にすることで、例えば先ほどの紙委員が言っていらした原子力の問題で、農地が汚染されて農業者の命が危ない、その農地を守る、もちろん目的です。これ、農業者の命が危ない、そういうことを目的にしたら、流れが比較的分かりやすくなるんじゃないのかと思います。
ということで、次の質問なんですけれども、この事前放流で、喜撰山ダム、関西のですね、調整が今回できて使用可能容量が出されているんですけど、何万トンの容量ができているでしょうか。河川局さん、お願いいたします。

○政府参考人(塩見英之君) お答え申し上げます。
国土交通省におきましては、国民の命と暮らしを守るために、治水施設の整備と、また水災害に備えた警戒避難体制の強化など、ハード、ソフト両面から取り組んでおります。
御指摘のダムの事前放流でございますけれども、御指摘の喜撰山ダムは関西電力が管理をしておりますが、今回、一連の利水ダムの治水活用の取組の流れの中で、近畿地方整備局と利水者の協議を行いまして、今回、事前放流によりまして洪水調節に利用可能となります最大容量は四百九十七万立方メートルというふうになっているところでございます。

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
こういうふうにして事前に予防的措置ができるということ、それが、実はもう一つ、西日本豪雨のときに倉敷市の真備で五十一名が亡くなりました。本当に現場はもう真っ平らで、何でここで、しかも真っ昼間に自宅で溺死した高齢者の方が四十名くらいおられたんです。

こういう自宅で溺死するということを防ぎたいので、私自身は防災あるいは環境の研究者としてなぜ死者が出るのかということをいろいろ調べておりましたら、河川政策がどうしても川の中だけなので、人が住む方に視野が行かないということで、二〇〇六年、知事になってから流域治水政策というのを進めてきたんですけれども、それの前段として、この真備地区ですね、短くて結構ですので、済みません、時間がなくて、真備で何でこういう被害が出てしまったのか、ちょっとコメントをいただけますか。河川局さん、お願いします。


○政府参考人(塩見英之君) 平成三十年七月の西日本豪雨では観測史上最大となる降雨水量を記録したということで、八か所もの堤防の決壊が起き、甚大な浸水被害が発生したということでございまして、その後、ハード、ソフト両面から対策を講ずるということで、国、県、市が連携をいたしまして、真備の緊急治水対策プロジェクトというものを策定し、治水施設の整備と併せて避難確保対策の強化に取り組んでいるというところでございます。

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
野村ダムもあるいは真備も調査に行きまして、本当に、事前に見えていたら命が守れたのにということで、本当に亡くなった方たちがお気の毒だったわけです。
そういうことを防ぎたいがために、川の外の人が暮らすところを守るということを河川政策の目標にしようとして、滋賀県では流域政策局というのをつくりました。

つまり、河川局を広げて、土地利用や建物そして避難体制含めて、全てを命を守るためにということでつくり替えをして、ただ、これをやりながら分かったんですけど、本当に条例一つに八年間掛かりました。

ただ、もう前例がありますから、ほかのところでも展開していただけると思うんですけれども、ここに、繰り返しになりますが、予防措置を目標とする復興防災省の存在価値があると思っております。
実は、先ほどの愛媛の肱川に調査に行ったときに、最下流のところに三善地区という地区がありまして、ここも内閣府が大変すばらしい予防対策をしておられたんです。それで、真備のような、在宅で、家の中で死者が出るような、そういう状況の中を、全部逃がして、一人も死者を出さなかった。内閣府さんの見事なモデル事業だったんですけれども、こちらでできたら質問なんですが、このようなモデル事業、過去五年間で七十か所ということなんですけど、私、三善地区の話を聞かせていただいて、あっ、これは、全国で水害、土砂災害、地震、いっぱいあります、小学校区ぐらい、全ての小学校区ぐらい、二万か所以上ありますけど、そういうところでできたらいいのになと思いました。

ということで、今、内閣府の防災として、このような災害に対する備え、人材的に十分かどうか、この辺り、今井大臣政務官にお伺いいたします。

○大臣政務官(今井絵理子君) 防災に関する専門的な人材、人員の確保は、我が国にとって重要な課題だと思っております。
昨今の一連の災害対応を踏まえ、課題への対応を図るべく、内閣府防災担当の令和二年度組織定員を拡充いたしました。また、この人事運用に当たっては、過去に内閣府防災担当や各省庁の危機管理部局に勤務した経験のある職員を再び内閣府防災担当に配置するなど、専門的な経験を有する職員の育成に努めています。
委員御指摘の地区防災計画のモデル事業については、地域の防災リーダーを中心に、市町村や住民等が地区防災計画や避難計画等の策定に取り組みやすくなるよう、これまで内閣府職員とともに防災に関する有識者が地区の支援に当たってきたところです。その結果、全国、今、約四千の地区で防災計画が策定済み又は策定に向けた活動が行われております。
このような地域の防災力向上のためには、内閣府職員のみならず、地方自治体の職員、防災に関する地域の専門家を確保することが重要だと考えています。
今後、地域の自主的な地区防災計画の策定をより一層推進するために、本年度から計画作成を支援できる自治体職員や地域の専門家を育成する研修も行うこととしています。
今後とも、我が国の防災・減災を更に強力に進めていくため、必要な人員体制の確保等に最大限努めてまいりたいと思います。

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
九十人余りの本当に少数精鋭でやっていただいていることを感謝を申し上げます。
ただ、本務はある意味で出向ですので、本務が国土交通省だったり農水省だったり総務省だったり、ですから、防災省の中に、内閣府の中でずっと何十年もプロであるという仕組みになっていないので、それが防災省の必要性ということだろうと思っております。
昨年の十一月二十七日に当委員会で、杉尾秀哉議員が平副大臣に、今、東南海、南海、あるいは首都直下地震などが起きたら、内閣府の防災体制、万全の体制できているんでしょうかとお伺いしたんですけど、そこはどうでしょうか。

○委員長(青木愛君) 時間が来ております。おまとめをお願いいたします。
では、簡潔に御答弁お願いいたします。
○大臣政務官(今井絵理子君) 災害対応については、内閣総理大臣の指揮の下に内閣官房や内閣府が中心となって省庁横断的な取組を行ってきたところです。
四月に、今年の四月に、自然災害即応・連携チーム会議を四月に設置いたしました。これは、平時から内閣危機管理監の下に関係省庁の局長級が定期的に集まり、そして自然災害対応における連携を一層強化しています。
引き続き、先生御指摘のように、関係省庁も含め、内閣府全体としても、この我が国の危機管理体制が万全になるように努めてまいりたいと思います。

○嘉田由紀子君 御丁寧にありがとうございます。

○委員長(青木愛君) おまとめをお願いいたします。

○嘉田由紀子君 復興大臣様には、また次回、御覚悟を聞かせていただいたらということで、済みません、時間が来てしまいました。どうもありがとうございました。

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