20200318法務委員会【確定稿】

令和二年三月十八日(水曜日)法務委員会

 

○嘉田由紀子君 碧水会の嘉田由紀子でございます。
新型コロナウイルス、そしてそれによる健康への不安、それ以上に経済、社会生活の不安というところで、私も市民、県民の皆さんからいろいろ声をいただいております。また、法務大臣の不規則発言についても大変様々な声をいただいておりますが、既に多くの議員の皆さんが質問しておられますので、私は、今まさに子供たちが置かれている状況、昨年来からの継続的なテーマに絞らせてお話、質問させていただきます。
昨年の臨時国会以降、七回にわたりまして、現民法の単独親権制度の問題と共同養育、共同親権導入の必要性、可能性について質問をしてまいりました。第一回の二〇一九年十一月十二日には、森大臣が、一般論としては、父母の離婚後も父母の双方が適切な形で子の養育に関わることは、子供の利益の観点からも非常に重要であると言及くださいました。
この通常国会では、昨年の森法務大臣などとのやり取りを踏まえまして、国内的な課題と国際的な課題、両面から質問をさせていただきます。
まず、国内問題ですが、子供の貧困、大変大きな社会問題です。二〇一三年には、子どもの貧困対策の推進に関する法律が成立し、子供の貧困対策に関する大綱を定め、一人親家庭や多子家庭の支援が提示されました。また、昨年、二〇一九年十一月には、二〇一三年以降の社会情勢の変化を踏まえて、新たな子供の貧困対策に関する大綱が提示されております。
ただ、いずれの大綱でも、一人親家庭の貧困と養育費の支払についての言及はありますが、そもそもなぜ子供の貧困が増えているのか、なぜ一人親家庭が増えているのか、そして、なぜ養育費の支払が滞っているのかなど、深く法的な社会構造と関わらせた言及がありません。政府として、これら三つの課題、子供の貧困の増大、一人親家庭の増大、そして養育費の支払の停滞、法的な構造、特に民法での単独親権の問題と関連しているという認識を持っておられるかどうか、法務大臣と、また子供の貧困対策担当の内閣府の見解を伺いたいと思います。
また、もしそのように認識しているとしたら、なぜ民法との関係を子供貧困大綱などの文書に記述していないのか、併せてお伺いいたします。

○国務大臣(森まさこ君) 委員の御指摘は、離婚後も父母が子供を共同して養育することを確保するような法制度を導入すれば、父母双方が子供と定期的に交流することを通じて、養育費の支払義務者も養育費を円滑に支払うこととなり、これによって子供の貧困を減らすことができるという観点からのものではないかと受け止めております。
一般的にも、面会交流の実施と養育費の支払との間には、一方が実施されれば他方も実施されるという事実上の相関関係があるとの指摘があることは認識をしております。
現在、法務省の担当者も参加して、父母の離婚後の子の養育の在り方について検討している家族法研究会では、御指摘のような観点も含めた検討がされているものと承知をしています。
引き続き、子供の貧困対策を所管している内閣府や一人親家庭の支援を行っている厚生労働省とも適切に連携しながら検討を進めてまいりたいと思います。
また、後段の御質問でございますが、子供の貧困の直接的な原因となり得るのは養育費の不払の問題であることから、子供の貧困対策大綱には、重点施策として養育費の確保の推進を掲げているところであります。養育費の不払については、私の判断で、養育費の支払を確保するための公的支援の在り方を検討する私的勉強会を大臣の下に立ち上げたところでございます。
また、御指摘の民法上の制度との関係については、家族法研究会において父母の離婚後の子の養育の在り方という観点から検討がされております。
養育費の不払問題の解消は、子供の未来を守るためにも重要であると考えており、引き続きしっかりと取り組んでまいります。

○政府参考人(藤原朋子君) 内閣府の立場から御説明申し上げたいと思います。
まず、客観的な状況といたしまして、委員御指摘の子供の貧困、それから一人親世帯の状況、養育費の支払の状況、こういったことにつきまして直近のデータで申し上げますと、まず、国民生活基礎調査に基づきます子供の貧困率で見ますと、平成二十四年に一六・三%であったものが平成二十七年には一三・九%に改善と。
それから、全国ひとり親世帯等調査に基づきます一人親世帯数で見ますと、平成二十三年から二十八年にかけまして、母子世帯の数で見ますと、百二十三・八万世帯から百二十三・二万世帯へ、父子世帯で見ますと、二十二・三万世帯から十八・七万世帯へ、多少減少している状況にございます。
また、一人親世帯で養育費を受け取っていない子供の割合でございますけれども、平成二十三年から二十八年にかけて、母子世帯では七七・五%から六九・八%、父子世帯では九二・九%から九〇・二%と、若干の改善というような状況となっておりますけれども、依然として子供たちをめぐる状況は厳しい状況にあるというふうに認識をしてございます。
また、子供の貧困の実態は非常に見えにくく、捉えづらいと言われてございます。困窮の状況も様々でありますので、昨年十一月に閣議決定をいたしました新しい子供の貧困対策大綱におきまして、貧困の実態を多面的に把握をするという観点から、一人親の正規雇用割合ですとか養育費に関する指標など、三十九の指標に拡充をいたしまして、施策の検証、評価を行いながら総合的に対策を進めていくということとしてございます。
委員御指摘の民法の問題につきましては、先ほど法務大臣から御紹介いただきましたような研究会がスタートしていると私どもも承知をしておりますので、私ども内閣府は子供の貧困対策大綱のフォローアップを行うという立場でもございますので、こういった検討状況につきましてもよく注視をさせていただければというふうに思ってございます。
以上でございます。

○嘉田由紀子君 森大臣、また藤原審議官、ありがとうございます。
御丁寧な答弁いただきましたけれども、こういう中で、ちょっとおさらいなんですけれども、グラフを四つ、資料を出させていただきました。
特に日本の戦後の家族史を振り返るときに、離婚の増大、それに伴う子供の人数、それを図一に示しておりますけれども、これ、昨年の十一月十四日にも私示させていただきました。そこに少しプラスをさせていただきましたけれども、一九五〇年、昭和二十五年から二〇一七年までの離婚の数、そして未成年の子供の数です。一九五〇年代は子供が大体年間二百七十から二百八十万人生まれておりました。そのときに親が離婚をした未成年の子供の数は約八万人、つまり生まれた子供の約三%でした。それが、直近のデータになりますと、これ最新の、昨年ですけど、八十六万人しか生まれておりません。そして、離婚によって親が別れて、一人、片親になるという子供さんが二十一万人、四人に一人という割合です。
この直接比較、年度、コホートの問題もありますから、少し誤解があるかもしれませんが、イメージとしては、子供が、あるいは親が離婚している子供さんというのはもう例外ではない、ごく一般的に、四人に一人くらいおられるという、それだけに大変大きな問題だということを、私、この図で改めて示させていただきたいと思います。
そして、法的に子供を言わば片親から引き離す、それが民法八百十九条となっているわけでございます。生物学的な父子、母子の関係は変わらない、あるいは人情としての父子、母子のつながりは変わらないのに引き裂かれてしまう、これが法律によってだということ、ここは、法務の役割、大変重要だと思っております。もちろん、DVなどで暴力的な親から逃げ出すための手段として片親親権を守るという声も大変根強くございますけれども、DVについては、DV防止法など実効性を高めることが必須だと思っております。
ページ二には子供の相対的貧困率、そしてページ三にはその単年度の家族の形態による貧困率、そしてページ四には国際的に見た子供の貧困の率を出させていただいておりますけれども、こういう中で、まさに日本国として喫緊の課題だということを御理解いただけると思っております。
あわせて、今、日本の国家として、少子高齢化問題、安倍総理も言われますように、国難でもあります。令和元年度少子化社会対策白書でも子供の貧困問題は触れられておりますが、この一人親家庭そのものを減らす政策については言及されておりません。
なぜ日本が少子化になってしまったのか。もちろん、大変多様な要因がございます。その一つに、日本の家族の在り方、子育てをめぐる窮屈さ、困難さがあるのではないのかと私は現場でも分析してまいりました。家族はこうあるべしということで、先ほど高良委員が質問なさいましたように、婚姻時の夫婦の別姓も選択できない、子育ては女性が専ら担うべしと思わされ、逆に、男性の子育て参加も進みにくい。実は、子供を連れ去られて悲しいお父さんたち、本当に子育て大好きなのにやれないという、そんなところの阻害もございます。
家族や子育てをめぐる多様性の不足や選択肢の少なさがこの少子化問題に関連しているのではないのかと私は認識しておりますが、法務大臣と少子化担当の内閣府にお伺いしたいと思います。

○国務大臣(森まさこ君) 我が国において、両親の離婚を経験する子供や未婚の父母の子供の割合が大幅に増えているなど、家族の在り方が多様化していることは認識しております。
また、政府としても、誰もが多様性を認め合い、個性を生かす社会の実現を目指していることは、先日の総理所信でも述べられたとおりでございます。
また、父母が離婚をした場合や未婚のまま出産した場合であっても、その親子関係の在り方、すなわち父母と子供の関わり方は様々であり、父母の双方が協力して子育てをすることが可能であり、実践されている場合もあると承知しています。
家族法研究会では、家族の在り方が多様化しているという社会情勢等を踏まえた検討がされているものと承知をしており、法務省としてもその議論に積極的に加わってまいります。

○政府参考人(藤原朋子君) お答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、家族の在り方、多様化しているというふうに認識をしております。一人親家庭の問題もありますし、核家族化の進展に伴う問題、あるいは共働き家庭の増加、様々、家族の在り方は多様化しているものというふうに認識をしてございます。
こうした多様化する中で、子育てをめぐる環境が大きく変化をしていく中で、一人親家庭も含めまして、子育て家庭における様々な多様なニーズに対応しつつ、切れ目のない支援に取り組んでいくことが重要だと考えておりまして、そういった点から少子化対策全体を進めてまいりたいというふうに考えております。

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
今ほど法務大臣言及なさっておられましたけれども、一人親家庭、特に未婚の一人親家庭をめぐる大展開がこの通常国会で起きております。具体的には、今回の税制改正で、寡婦控除の対象を、未婚か既婚かの区別なく、男女の区別なく、つまり未婚の一人親家庭にも広げたことです。
実は、私も知事時代に、この未婚の一人親家庭の方たちが寡婦控除を得られないということで、随分市などと議論もし、そして特別な制度もつくってまいりました。それを今回、国として、これまで法律婚を重視してきた日本の家族制度からの大転換、私はコペルニクス的大転換と歓迎をするところでありますが、このような画期的な制度転換を、法務大臣、どう評価なさっているでしょうか。また、少子化対策の母体である厚労省さんはどう評価しておられるでしょうか。

○国務大臣(森まさこ君) 御指摘のとおり、現在、婚姻歴の有無や親の性別にかかわらず、生計を一にする子を有する単身者について、同一の一人親控除を適用することなどを内容とする所得税法等の一部を改正する法律案が国会において審議中でございます。女性の国会議員の先生方を中心に、また男性の国会議員の先生方にも賛成をしていただいて、そんな大きなうねりが起こったというふうに伺っております。
この税法については法務省の所管外でございますが、今回の見直しは、全ての一人親家庭の子供に対して公平な税制を実現する観点からされているものと承知をしております。

○政府参考人(依田泰君) お答え申し上げます。
未婚の一人親に対する税制につきましては、厚生労働省といたしましても、平成三十一年度税制改正要望から二か年にわたり税務当局に要望してきたところでございます。
今般の税制改正は、全ての一人親家庭の子供に対しまして公平な税制を実現する観点から、未婚の一人親家庭についても、死別、離別の場合と同様の条件で控除を適用するものでありまして、子供の貧困対策の面でも意義があるものであると考えております。

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
子供は親を選べません。生まれた子供にとっては、それこそ親が法律婚であろうが事実婚であろうが、あるいは親が離婚しようが、子供は経済的、精神的、社会的にきちんとケアされる、そういう権利を持っておりますし、また、大人の世界はそれを支える義務があると思っております。
こういう中で、諸外国の事例を見ますと、私は、様々な世界の家族を見てきた中で、やはりフランスはこの子供中心の政策、うまく進めてきていると思っております。特に、一九八〇年代から九〇年代、出生率が下がってしまいました、一・三〇とか。そういうときに、シラク三原則、シラク元大統領が政策パッケージを実行しました。
三点あります。一つ目は、それぞれの個人の都合でいつでも子供を持っていいですよと、結婚していようがしていまいが、そして学生であろうが、経済的支援は確実に国が支える、二点目は、無料の保育所を完備し、そして教育費も国家支援としております、そして三点目は、育児休暇などからどうしても、やはり女性、出産、半年、一年、仕事から離れなければいけない、離れた後、差別をしない、元の仕事にきちんと戻れる、これがシラク三原則でございます。
結果、ワンセットの政策パッケージを進めまして、一九九〇年代、一・六、先ほど一・三まで下がったと申し上げましたけど、それを十年余りで二・〇まで上昇させました。ここは、実は政策パッケージが大事なんです。経済的支援、そしてサービス的支援、これは今、少子化対策あるいは子供の貧困対策で日本も随分進めていただいておりますけれども、法制度も含めた政策パッケージが必要でございます。
そういう中で、私自身は、滋賀県で知事時代に子育て三方よしという政策を進めて、人口当たり出生率全国二位まで回復をしましたけれども、そして、その母体は子ども・青少年局という、縦割りではなく横割りの組織をつくりましたが、政策パッケージをきちんと国として進めていただきたい、そのためには、やはり法務の部分をもう少しキャパシティーを増やして、私は、子供家族庁のような、そういう組織が何としても必要だとも思っております。今日はもうこれ以上この家族庁のこと申し上げませんが。
そして、ここ十年ほどの動きを見ますと、実は、現場の弁護士さんの活動のところでも、ここ十年、なかなか進みません。あるいは、議連も進みません。あっ、時間ですね。では、この弁護士さんの活動なり議連の活動は次回に残させていただきますけれども。
最後に一つ、新型コロナの問題で、京都コングレス開催に向けて、森法務大臣も、平和と公正を全ての人々に……

○委員長(竹谷とし子君) お時間が過ぎております。

○嘉田由紀子君 ピース・アンド・ジャスティス・フォー・エブリワンと言っていただいておりますけど、この京都コングレスへの開催に向けた状況、どうなっているでしょうか。最後、短くて結構です、お願いいたします。

○政府参考人(山内由光君) 京都コングレスにつきましては、これ、国連が開催する、主催する国際会議でございまして、我が国はこれをホストする立場でございまして、開催の可否などにつきましての最終判断は、これ国連においてなされるものとなります。現在はその検討が進められているものと承知しております。

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