Facebook 2020年4月26日 「新型コロナ自粛」からの出口を(その1)

出口を示すのは政治の責務、「闘い」ではなく「共存」を、そのために検査体制は「PCR検査と抗体検査の二本立て」が必要です。昨日25日には京都新聞の「私見政見」でとりあげていただきましたが、今のところ記事転載ができないので、エッセンスも含めてまとめさせていただきます。京都新聞の取材を受けた後、1週間の国内、国際的な動きもふまえての今の私の見解を二回にわけて表明させていただきます。(また長いです、2000文字)

京都新聞の記事では、環境史研究者の立場からは人が動けば感染症はひろがる、天然痘は植民地化の時代に、コレラは近代化とともに、そしてグローバル化とともに新型インフルがひろがった。地球文明史的に「撲滅」できない感染症とは「共存」するしかない。ポイントはふたつ。①死者や重症者を減らすとともに、②経済と日常生活を崩壊させないこと。

4月7日の7都府県の「緊急事態宣言」から3週間、17日に全国にひろげてから10日です。そろそろ出口を示さないと、家族や地域が分断され、文化は継承の糸を切られ、日常生活は破壊され、心は疲弊して、経済も疲弊をして結果的に自殺者が増える、ということにならないか心配です。その間に、特定の強権国家が地球規模での経済、政治的覇権にうごきださないかも心配です。「ポストコロナの世界」を見通した戦略が国家としては必要です。

「大衆に恐怖をいだかせることが統治の要」という16世紀イタリアの政治思想家マキャベリの言う、古典的政治戦略を今の政権ではとっているようです。巨大な予想死者数を示し、クラスター追いかけで、ウイルスを「撲滅」「消滅」させようとしているWHO方式からそろそろ方向転換が必要ではないでしょうか。クラスター調査にあたる保健所や自治体、また医療現場で働くみなさんの努力のおかげで、人口あたり感染者数や死者数も、国際的にみて、かなり低い状態を保っていまいます。亡くなられた皆さんのご冥福を心からお祈りするとともに、特に高齢者や免疫力がひくい既往症の人たちへの配慮は重要です。

今、国民的関心は「連休後」の日常の社会活動がどこまで再開できるかという事でしょう。長い期間の学校の休止や、社会活動の制限で家族内でのDVや虐待も増えています。家族もこわれつつあります。経済教育への影響はあとからでてきます。2009年のリーマンショック時、1年間で自殺者が2.2万人から3.2万人へと1万人もふえてしまいました。私は現職滋賀県知事でしたが、自殺者が滋賀県内だけでも100名もふえてしまいました。自殺者は40-50代の働き盛りの男性が多かったことも深刻でした。ここから回復するのに数年かかりました。

今国際的には、コロナ対策として、社会経済活動についての「制限派」と、制限最小で国民の自主性に任せる「自主派」のふたつのタイプがあります。前者には、都市をロックダウンしてトップリーダーが「コロナ戦争」と表明しているイタリア、フランス、そしてアメリカがあります。一方にはスウェーデンやアイスランドのように、教育や国民経済をできるだけ維持しながら、死者数を減らそうという「コロナ共存」国があります。日本はその中間といえるでしょう。欧米ほどの強制ではなく「自粛要請」ということで国民の参加と協力を強調しています。今のところ、国民的理解は得られているようですが、これ以上、自粛をどこまで続けるのか、その出口を示す責任が政治にはあります。

ノーベル賞学者の山中伸弥さんも「僕も最初は“ウイルスとの闘い”という表現を使っていたんですが、今はもう使っていないんです。“ウイルスとの共存”だと思っています。このウイルスを完全に世の中からなくすことは不可能ですので、いかに人間社会が受け入れるか。この数ヶ月が1番の大切な時期」(NHK取材)と言っています。京大の藤井聡教授の「ウイルスとは共存を」という公共政策論としての政策提案は、この欄でも何度も紹介してきました。藤井教授のFBが参考になります。

スウェーデンでは、強制より個人の「責任ある行動」による自主性を尊重する国民性や医療制度の充実があります。ここでは多数が感染して免疫を持つことでウイルスを抑制する「集団免疫」も念頭にあるようです。スウェーデン保健当局の責任者、アンダース・テグネル博士は疫学専門で「首都人口の多くが免疫を獲得し、感染抑止に効力を発揮し始めた。数理モデルは5月中の(集団免疫)達成を示している」と解説。「独自路線」が功を奏するかどうか、世界が展開を注視しています。日本からも目をはなせません。

高福祉・高負担、しかも若い人たちの投票率は90%に近く、国民の政治意識の高さや、子どもや高齢者の孤立を防ぐ社会的仕組みづくりなど、もちろん離婚後も共同親権。心理学や社会学、疫学に根差した科学的政策を強みとしているスウェーデン方式は日本では採用できないかもしれません。しかし日本も捨てたものではありません。今日、日曜日の各地の行楽地の人出は、先週に比べて9割以上減っているというニュースです。スウェーデン方式をすすめるためには、「PCR検査」に加えて「抗体検査」が必要です。時事通信のスウェーデンレポート、紹介させていただきます。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2020042300702&g=int

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