20191127東日本大震災復興特別委員会議事録【完成稿】

●【配付資料】20191127復興特

令和元年十一月二十七日(水曜日)参議院東日本大震災復興特別委員会

○嘉田由紀子君 七月に参議院議員、初めて当選させていただきまして、初めてのこの復興委員会での質問でございます。改めまして、小規模会派へも十分時間を配分いただきまして、理事の皆様に感謝を申し上げます。
また、今回、十九号台風、十五号を含めて九十八名もの方が亡くなられました。被害に遭われた皆様にお見舞い申し上げますとともに、実は私自身、知事の時代に、関西広域連合のカウンターパート支援として、福島県と滋賀県、応援をしてまいりました。今も滋賀県から土木の技術者、派遣をさせていただいております。そのようなことで、大変縁の深い皆様とこういう場でお出会いできましたことをうれしく思います。
今日は、温暖化時代の治水対策に絞って質問をさせていただきます。
滋賀県では、流域治水推進条例というのを全国に先駆けて作ってまいりました。水害に強い地域社会づくりということでございます。言うまでもなく、昨年、西日本豪雨、そして今年の東日本台風、観測史上最大の豪雨が去年と今年だけで二百二十六か所も起きてしまっております。
元々、日本は地形的にも災害、特に洪水の多い地域でございます。平野部の七割は洪水でできております。洪水は自然現象です。しかし、水害は社会現象ということで、私自身は、一九八〇年代から環境社会学者として、なぜ、ある水害で人が、死者が出たのか、あるいは浸水被害ができたのかというようなところで研究をしてまいりました。関西中心にですけど、四十か所ほどの調査研究をし、そしてそれを本にし、また論文にもしてきたんですけれども、そこで分かったことは、土地利用や建物、そして避難体制、そういう社会の側が備えないと、ハード対策だけでは被害の最小化ができないということでございます。
それで、学者としていろんな提案をしてきたんですけど、なかなか変わらないので、それだったら自分で政治をやるしかないということで、二〇〇六年にかなり思い切って政治家を知事としてやらせていただいたんですけれども、その中で特に流域治水条例というのを八年掛けて作ってまいりました。それに関わり七点ほど質問させていただきたいと思います。
まず一点目ですけれども、今回も、先ほど来から、例えば福島でフレコンバッグが流れてしまった、それは元々浸水地域であるところにフレコンバッグを置いていたんだと推定されます。というのは、今の日本のハザードマップ、例えば国管理の一級河川、百四十八河川ではほぼ一〇〇%ハザードマップができていると。それから、都道府県管理は、千六百二十七のうち実は五四%しかできておりません。
そして、今日の資料を見ていただきたいんですけれども、皆さんにお配りしました資料、一から十二までのパワーポイント資料になっておりますけれども、ここの一のところで、実はハザードマップというのは今大変限定されたデータしかないんです。例えば、一級河川だけではなくて二級河川、あるいは農業排水路があふれる、あるいは下水道があふれる、元々土地が低い、これを、全ての浸水源を一体化したマップは、日本で作ったのは滋賀県だけです。ここにかなりの技術とお金を入れさせていただきました。職員が大変頑張りました。
これをやるには、縦割りではなく、横串を刺す必要があるんですけれども、一問目の質問ですけれども、是非国の方も、今後横串を刺せるようなハザードマップ作りをお願いをしたいと思っておりまして、国土交通省にお伺いをしたいと思います。
以上です。

○大臣政務官(門博文君) お答えをさせていただきます。
今お話を頂戴しましたように、滋賀県では、水防法に基づく浸水想定区域の指定に加え、県が管理する主要な一級河川や普通河川などによる内水氾濫に係る水害リスク情報を、これ、地先安全度マップとして公表されていることは承知をしております。そして、今委員お話しいただきましたように、まさに委員が滋賀県知事の時代にこのことに大変熱心に取組をされたということも我々も承知をさせていただいております。
また、この地方自治体、滋賀県以外では、同じような取組として、埼玉県で、河川整備状況を踏まえ、過去の洪水の状況を基に、湛水することが想定される区域、水がたまることが予想される区域について条例を定めて、湛水想定区域図を作成して公表をされております。こうした取組は、河川の外水や内水の氾濫形態にかかわらず、地域住民が水害リスクを理解するのに有益であり、また町づくりと一体となった防災対策の推進にも有効であると考えております。
このため、国土交通省では、今後の気候変動の影響により水害の頻発化、激甚化が懸念される中で、流域全体でのハード、ソフト一体となった対策を検討するために、気候変動を踏まえた水災害対策検討小委員会というものを設置をしておりまして、この滋賀県の先進的な取組についてはこの委員会でも紹介をさせていただいたところであります。
今後、こうした先進的な取組も参考にさせていただいて、水害リスクのより低い地域に居住や都市機能を誘導するなど、町づくりと一体となった対策について、我が省としても検討を深めてまいりたいと思っております。

○嘉田由紀子君 政務官、ありがとうございます。
実は、この費用は、全て県下全域でやるのに二億円なんです。滋賀県全体、面積的に全国の百分の一ですから、二百億円あったら全国でできますので、是非国土交通省の方も予算を入れていただけたらと思います。
土地利用についての御質問も御回答いただきましたので、今、人口減少時代です。緻密な地先の安全度マップあるいはハザードマップを作ることで土地利用の適正化ということがどんどん進められると思います。
ただ、問題は、このときに、例えば建物規制どうするのか、土地利用規制どうするのかという規制の母体がどこがやれるかということです。国土交通省さん、土地、都市計画の母体、あるいは建築の母体というところもありますので、滋賀の方では、洪水の危険性の高い区域に建物を建てることを、特に三メートル以上浸水するおそれがあるところはいざというときに逃げられなくて死者が出る。例えば、昨年の西日本豪雨のときの倉敷市で五十一名もの方が真っ昼間に家の中で亡くなっております。あれは、元々が浸水するところを知らずに住んでいたわけですね。ですから、そういうものを、建物を建てる、耐水化建築ということで配慮することも必要だと思うんですけれども、ただ、これ、滋賀県内で三メートル以上浸水するところ抽出しました。五十か所、千八百戸です。このことを地元に知らせると、どうしてくれるんだ、地価が下がるじゃないか、そもそももうここに住んでいるんだからということで、なかなか土地のかさ上げとかあるいは住み替えというところが難しいんですが、この辺り、国土交通省さんの方で提案などございましたらお願いをいたします。

○大臣政務官(門博文君) 御指摘のように、近年の自然災害を踏まえ、増大する災害リスクに対応するために、都市計画による開発の規制、そして立地誘導等をハード対策と併せて行っていく必要があると考えております。
例えば、従来より都市計画法に基づく開発許可制度においては、浸水による危険の著しい区域を地方公共団体が条例で災害危険区域に指定している場合には、その区域での宅地開発を原則として禁止しているところであります。
また、今各都市で進められておりますいわゆるコンパクトシティーのための立地適正化計画においても、国が定める運用指針で、浸水想定区域などについて、災害リスクや警戒避難体制の整備状況等を総合的に勘案し、適当でないと判断される場合は原則として居住誘導区域に含まないということにしております。
この考えに基づきまして、例えば近畿地方でいいますと、兵庫県の西脇市、そして御地元滋賀県の彦根市などでは、実際にこの居住誘導区域の設定において、一定の深さ以上の浸水想定地域が除外されているところでございます。
今回の災害で、国土交通省といたしましては、全国各地で多様な被害が相次いだことを踏まえ、都市計画でどのような対策が可能なのか、またコンパクトシティーの取組と防災対策の一層の連携や、開発規制の見直しも含めた必要な対策を進めてまいりたいと思っております。

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
土地利用とそれから建物規制、ここはちょっと踏み込んでいただいていないんですけれども、時間がちょっと迫っておりますので、是非とも横串を刺せる政策を国の方も自治体とともに進めていただきたいと思います。
次に、今回の被害の中で、私も長野の千曲川、また福島、見せていただきました。特に千曲川の堤防破堤については、一部やはり堤防が弱かったんじゃないのかということが専門家が言われております。
私たち、特に河川の堤防などを研究してきた立場からしますと、耐越水堤防、天端とのり、裏のりと、それから一番裏の住宅側のところですね、この三か所補強することで耐越水堤防できるだろうと言っていたんですけど、実はなかなか、ここ進んでいないのが実態です。
この辺り、耐越水堤防について、もっともっと実は早く安く確実に堤防強化できます、その気にさえなれば。しかし、自治体は本当に予算がないので、その辺りを、国土交通省さんの方はこの耐越水堤防に対してどういう見解をお持ちか、お願いをいたします。

○政府参考人(五道仁実君) お答え申し上げます。
治水対策に当たっては、今委員御指摘のように、堤防の強化、また遊水地等の洪水調節施設の整備、様々な手段を組み合わせながら、河川の特性、流域の状況に応じて対策を進めていくということが重要でございます。
本年の台風第十九号におきましては、国管理、県管理合わせて百四十か所の堤防の決壊がございました。それらの中で、堤防の強化というものの重要性はますます増しているものというふうに考えてございます。
堤防の浸透や浸食に対する強化に加え、越水しても決壊までの時間を少しでも引き延ばすための堤防天端や裏のり尻等の補強については、三か年緊急対策等においても実施をしているところでございます。
今回、堤防が決壊した各河川につきましては、現在、専門家から成る堤防調査委員会等において堤防の決壊要因の究明がなされているところでございます。そのような結果も踏まえながら、堤防強化策について進めてまいりたいと考えております。

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
その堤防強化なり河川改修、実は地元の土木の中小業者がしっかりと技術を持ってできます。もちろんゼネコンでないとできない仕事というのもあるんですけど、私の知事の経験からすると、本当に地元の中小の土木業者さんが堤防強化やあるいは河川の掘削、そして最近は、例えば川の中の樹木伐採は住民参加でやろうというようなことで進めておりますので、是非この中小の土木業者さんに予算が回り、そして、それが自治体に回るような形で河川の維持管理の予算を何としても増やしていただきたいと思っております。
そして、この地元の中小業者さんが元気になると地域社会が元気になります。現場で、例えば消防団員とかあるいはお祭りをしてくださる地域住民とか、そういう、そしてそこで家族ができれば、それこそ人口の問題にも答えができますので、その辺り、是非中小の土木業者さんを支援できるような、そのような事業を是非予算的にも増やしていただきたいと思っております。ここについてはもう時間がないので、お願いをしておきます。
そして、次に内閣府さんにお願いしたいんですが、先ほどのフレコンバッグのこともそうですし、それから千曲川があふれて、それこそ一両三億円もする北陸新幹線の車両が水についてしまった。あそこは、実は、江戸時代から大変水つきの場所で、杉尾委員などはよく御存じだと思います。そういうことを知りながら、なぜ対応できなかったのか。これが事業継続計画、ビジネス・コンティニュイティー・プランと言っているんですけれども、これも自治体は、例えば滋賀県の流域治水条例では、第六条に、事業者の責任として、ハザードマップに基づいて従業員の命を守り、そして施設を守り、併せてそれぞれの事業を動かし続けられるようにという事業継続計画を入れておりますけれども、この辺り、内閣府さんの方ではどのような事業継続計画を作っておられるか、あるいはその現在の状況を教えていただけたらと思います。

○政府参考人(村手聡君) お答え申し上げます。
事業継続計画は、企業が災害を受けても被害を最小限にし、できるだけ早く事業を回復できるよう、あらかじめ対応方針、対策、体制、手順などを定めておく計画でございます。幅広い方々にとって大変重要なものと認識してございます。
このため、内閣府では、これまで企業におけるBCPの重要性、考え方、策定方法などをまとめました事業継続ガイドラインを作成するとともに、継続的にセミナー等によりその重要性を説明するなどして、その普及に努めているところでございます。
内閣府で隔年に実施しておりますBCPの策定状況調査によれば、平成二十九年度でBCPの策定率は、大企業で二十七年度調査比三・六ポイント増の六四%、中堅企業で平成二十七年度調査比一・九ポイント増の三一・八%となっているところでございます。引き続き、関係省庁と連携しながら、企業へのBCPの普及啓発に向け努力していきたいと思います。
以上でございます。

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
事業の方はまさにBCPという言い方で、そして、実は三・一一もそうですけれども、今回も本当に工場が浸水をして、そして重要なオンリーワン企業が浸水してしまったがために経済動かなくなったということがございますので、このBCPはまさに経済の根幹に関わるところでございます。何としても国全体で、今なかなか中小企業の方の作成率が低いということですけれども、こういうところも、中小企業、商工会や商工会議所などを含めて事業継続計画作れるように支援をしていただき、また、自治体の方にももっともっとそこを認識を高めていただけるようにお願いをしたいと思います。
この事業継続計画と並行して、まさに避難体制、人々が命を守るにはどうするかということで、最後、七番目に住民の避難についてお伺いをさせていただきます。
滋賀県の流域治水条例では、この皆さんの資料の中の七というところに、人づくりでも治水と、備えるというものをやらせていただいておりますけれども、ここで意外と大事なのが子供です。大人はある意味で正常性の偏見、そんなの今までなかったからないよと言うんですけど、子供が大事です。子供が学校で、地域で進めると、家で広げて地域が備えが強くなります。
この辺り、内閣府ではモデル地域などもつくっておられるということですけれども、その現在の状況お知らせいただけたらと思います。お願いします。

○政府参考人(村手聡君) お答え申し上げます。
災害の多い我が国において、行政による公助と連携して自助、共助の防災活動を通じて地域の防災力を向上させることが極めて大切と考えてございます。
内閣府では、平成二十六年度から二十八年度までの三か年で、地区の居住者等が策定する地区における防災活動に関する計画でございます地区防災計画を策定する四十四地区に対し、有識者によるアドバイス等を行い、その計画策定を支援してきたところでございます。
また、地区防災計画の実効性を高めるために、例えば愛媛県の大洲市の三善地区など八地区におきまして、住民各自の避難場所や避難ルート等を記載した災害・避難カードといったものを作成する取組をモデル事業として実施したところでございます。今年度は、岡山県倉敷市とか、また高知県本山町の二校において、防災教育の教材や避難訓練内容の充実を図るためのモデル事業を実施してございます。
このような地域防災力向上のための取組を全国展開するために、地区へのアドバイザー派遣とか、また地区防災計画を推進する自治体職員のネットワーク、地区防’z等を通じた積極的な取組を推進しているところでございます。引き続き、全国にこうした取組が広がるよう努力していきたいと思っております。
以上でございます。

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
時間が来ておりますので。私も、三善地区に行って勉強させていただきました。是非これを全国のそれこそ数万ある小学校区などに広げていただけたらと思います。
ありがとうございました。

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