20191114法務委員会【完成稿】

【配付資料】20191114参議院法務委員会(離婚件数等)

令和元年十一月十四日(木曜日)法務委員会

○嘉田由紀子君 碧水会の嘉田でございます。
先日に引き続きまして、共同親権の問題、進めさせていただきます。
まず、このグラフを御覧いただきたいんですが、(資料提示)これは人口動態統計からですけれども、親権を行う者別に見た離婚件数及び親が離婚をした未成年の子の数の年次推移、昭和二十五年、一九五〇年から平成二十九年、二〇一七年の過去六十七年のものでございますけれども、これを見ていただきますと、いかに近年、少し凸凹はあるんですけれども、離婚の数が増えているかと。
そして、ここで大変大事なのは、親が離婚した未成年の子の数、これ折れ線グラフですけれども、二〇〇二年がピークで三十万人近く、毎年。そして、最新の二〇一七年、二十一万人。二十一万人と申しますと、三百六十五日、一日にそれこそ五百七十人近くの子供さんが、言わば離婚で親を、片親を失う状態にあるということでございます。
もうそれだけの喫緊の課題であるということを申し上げまして、まず最初に、これまでの法務大臣の認識の中で、平成三十一年二月十八日、衆議院の予算委員会で山下当時の法務大臣が、離婚に至った夫婦の間では、往々にして、感情的な対立のため、合意に至って子供の養育や監護権に必要な合意が適時に得られないなど、子供の利益に反する事態が生ずるおそれがございます、それゆえ共同親権には慎重という回答でございましたけれども、森法務大臣の御認識はいかがでしょうか。

○政府参考人(小出邦夫君) 御指摘のとおり、本年二月の衆議院予算委員会におきまして山下法務大臣は、離婚後の共同親権制度の導入につきまして、離婚に至った夫婦の間では、感情的な対立のために、子供の養育監護に必要な合意が適時に得られないなど、子供の利益に反する事態が生ずるおそれがある旨の答弁をしております。
親権者は、子の医療に関する事項や進学に関する事項など、子について重要な決定をしなければならないことから、離婚後の共同親権制度を採用した場合には、制度の内容次第ではそのような決定が適時にされないことで子の利益に反する事態が生ずると評価される面があると考えております。
他方で、父母が離婚した後であっても、子供にとっては父母は、父母のいずれもが親であることには変わりはございません。したがいまして、一般論としては、父母の離婚後も父母の双方が適切な形で子の養育に関わることは子供の利益の観点から非常に重要なことと考えております。
この父母の離婚後の子供の養育の在り方に関しましては、これまでも申し上げたところですけれども、公益社団法人商事法務研究会におきまして研究会が近く立ち上がり、法務省としても、この研究会に担当者を派遣して、積極的に議論に参加する予定にしております。この研究会においては離婚後共同親権制度の導入の是非についても議論されることになるものと承知しておりますが、その際には子の利益に配慮した制度の在り方について議論がされることになるものと考えているところでございます。

○嘉田由紀子君 この感情的対立というのが、ある意味で日本だけで言われているんですね。既にOECD諸国二十か国では共同親権を採用しております。日本だけが感情的対立ではないだろうということをここで指摘をさせていただきまして、研究会の方では、諸外国と比較しながら、国民にとっても納得のいく説明が欲しいと思っております。
そういう中で、一番の弱者である子供が今放置された状態でございます。いずれにしろ、今の共同親権を取っている北米あるいはヨーロッパでも一朝一夕にできたわけではございません。過去、近代化の中で、数十年掛けて単独親権だったものを共同親権にということで、片方の親による子供の連れ去り、あるいは法的に刑事罰化をしてきて、そういう中で、先ほどの報告書、海外調査報告書にもそこで触れられております。御指摘のように、親が離婚をしても、子供にとって父は父、母は母という状態は変わらないわけです。
その中で、今、共同親権に慎重な方たちの意見には、DVがあるから共同親権には反対だという御意見がございます。もちろん、夫婦間のDV、子供への虐待、それは海外でもあるわけですし、それ自身を厳罰化して、そして親権を制限するべき理由にしなければならないと考えております。
例えて言えば、DVがあるから制度としての共同親権が採用できないというのは、病気になった患者に対して、副作用があるから本来の手術やあるいは薬の処方ができないというような例えにも匹敵するものではないでしょうか。リスク管理、最小化することはもちろん重要ですけれども、全体として命を救うのに必要な措置をせずに副作用のリスクばかりが強調されていると、人々の命救うことはできません。今一番求められている子供たちの経済的、精神的、社会的安定というのは、まさにこの法的なバックをつくっていただくところにあると考えております。
という中で、今の日本の単独親権の方針でございますけれども、ある意味で家庭や家族の状態が無法地帯化したままという解釈もできるんですけれども、この辺り、法務大臣として、民法、刑法、裁判制度を所管する大臣としての役割また御認識はいかがでしょうか、森法務大臣の御意見をお伺いしたいです。

○国務大臣(森まさこ君) 委員の御指摘、大変重要であると思います。DV、そして児童虐待、これに対して無法地帯であるというような御指摘ございましたけれども、しっかりとこれは対処していかなければならないと思いますので、事務方から現在の取組について説明させたいと思います。

○政府参考人(小出邦夫君) お答えいたします。
委員からDVの点の御指摘ございました。現行法の下でも、いわゆるDV防止法に基づきまして、DV加害者に対して保護命令を出すことによって被害者の保護が図られているところでございます。
また、面会交流につきましても、DV等の問題があって親と子供だけで面会をさせることが子の利益に反するおそれがあるような場合には、第三者立会いの下で面会交流を認めるなどの運用もされていると承知しております。現行法も、DV被害者だけではなくDVの問題を抱えた父母間の子供についても一定の配慮をしているところでございます。もっとも、委員御指摘のとおり、現行法での面会交流等につきましては子の利益の観点から十分ではないという批判もあると認識しております。
先ほど申し上げました家族法制に関する研究会では、この父母の離婚後の子供の養育の在り方についても議論がされる予定でございますが、その際には、DVがある、あるいはDVの疑いがある事案にどのように対応すべきかという点も大きな論点になると考えております。この研究会の議論に積極的に参画してまいりたいというふうに考えております。

○嘉田由紀子君 研究会でもちろん進めていただくのは大事ですけれども、今、先ほど申し上げましたように、毎日五百七十人近くの子供たちが、年間二十一万人の子供たちがかなり無法地帯の中にあるということを、その切実さを理解をしていただきたいと思います。
その中で、目黒区の船戸結愛ちゃん、義理の父親から虐待を受け命を失ってしまって、大変痛ましい事件でございました。こういう事件が次から次と起きている。ここに、子供を虐待した実親らが刑事裁判の被告になり、また義理の親ももちろん刑事裁判の被告になり子供と接触できずにいたと、そういう中で、もう一方の実親の悲痛な声も聞こえてきております。共同で養育していれば、同居する実親の経済的、社会的また心理的負担も下がり、子を、実の子をいさめることもなかっただろうと推測ができます。
このような中で、日本の家族法制度の欠陥がある意味で子供に現れているのではないでしょうか。子供は親を選べません。だからこそ、親の側、大人の側が子供の立場に徹底的に寄り添った制度をつくる必要があると思っております。
共同親権制度を導入することが悲惨な虐待事件を減らせるのではないのか、ここ、法務大臣の御意見、御見解はいかがでしょうか、お伺いいたします。

○委員長(竹谷とし子君) 民事局長の答弁でよろしいでしょうか。

○嘉田由紀子君 大臣の御答弁をお願いをしたいと思います。

○国務大臣(森まさこ君) 児童虐待については、私も大臣所信で述べさせていただきましたとおり、しっかりと取り組まなければいけない問題だと思っております。厚生労働省に総合的な役割を担っていただいた上で政府全体で取り組むように決まっておりますので、我が法務省内でも児童虐待とたたかう法務省内のプロジェクトチームを結成をいたしまして、その中で検討が始まったばかりでございます。御指摘の委員の御意見も踏まえて、そこでしっかりと検討をしていくことを期待をしているところでございます。

○政府参考人(小出邦夫君) お答えいたします。
離婚後の共同親権制度、これが採用されたといたしましても、両親が離婚している以上、現実の監護は一方の親が行うことになるのが通常だと思われます。親権が共同で行使されるのは、主に大学等への進学の可否あるいは医療行為に対する同意等の重要事項の決定に関わる場面であるとも考えられます。
他方で、父母の離婚後も父母の双方が子供の養育に適切に関与することは重要であると考えておりまして、特に、実際に子供と交流をして子供の様子を観察する機会となる面会交流を促進する、この面会交流を促進されることは、委員御指摘のような事案におきまして児童虐待を防止する観点から非常に有効なものであるというふうに法務省としても考えております。

○嘉田由紀子君 ただいまの、離婚後例えば共同親権になったとしても、教育あるいは医療というところに大変狭められている、そのことが実は問題だと私は指摘をしたいと思います。既に法律に、民法の八百十九条には、離婚後は単独親権という規定があるわけです。その規定を変える必要があるだろうということを私どもは申し上げておるわけです。
しかも、単独親権でありながら、親権を付与する基準が法的にございません。例えば、アメリカのニューヨーク州などでは子供を養育する親の能力やあるいは親の心身の健康状態、そこに親のお互いに協力し合う能力、フレンドリーペアレントルールというようなものがございます。これはフランスあるいはドイツでもございますけれども、この辺りの基準なしに単独親権というものがある。そうすると、法の実務、裁判所の現場ではどうなるかというと、実は継続性の原則、これ全くルールとして原則ではないんですけれども、法の実務上、継続性の原則というところで、例えば強制的に連れ去りをしたりというところから実態をつくっていくというようなことが起きているわけでございます。
八分までという時間で、もう今日はここで時間が過ぎてしまっておりますけれども、この続きはまた次回にさせていただけたらと思います。
ありがとうございました。

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