20191121法務委員会【完成稿】

令和元年十一月二十一日(木曜日)法務委員会

○嘉田由紀子君 碧水会の嘉田由紀子でございます。
今回の報酬と給与の改定につきましては、先ほど来議論ありますように、安江委員も御質問のように、法の現場、特に家事裁判、大変増えております。そういうところで、現場の皆さんの仕事量もまた役割も高まっておりますので、給与の改定については賛成させていただきます。
その立場でまず最初に質問させていただきますけれども、私は一貫して離婚後の親権問題扱わせていただきますけれども、親が離婚した後の子供に関する紛争、家庭裁判所では、平成二十一年千六百八十二件から平成三十年には三千七百八十七件と二倍以上に増加をしております。子供に関わる紛争というのは、それこそ子供たちの心に寄り添いながら、大変丁寧な配慮そして専門的な知識も必要でございます。
そういう中で、現在家庭裁判所で働く裁判官、調査官を始めとする職員の方々の労働環境につきまして最高裁判所にお伺いをいたします。よろしくお願いいたします。

○最高裁判所長官代理者(村田斉志君) お答え申し上げます。
家庭事件、その中でも当事者の対立が先鋭化し、複雑困難化しやすい子供に関する紛争につきましては、委員から御指摘がありましたとおり、特別な配慮と丁寧な対応が必要であるというふうに認識をしております。
そういう観点からは、心理学、社会学、教育学、社会福祉学等の行動科学の専門的知識あるいは技法を有する家庭裁判所調査官の役割が非常に重要になってきているというふうに思います。また、そうした調査も踏まえまして判断をしていく裁判官、そして事件の進行の管理等をしている書記官につきましても体制の整備が必要だというふうに考えておりまして、これまでは委員の皆様方の御理解もいただきながら必要な体制の整備に努めてまいったところでございまして、そのかいもございまして、現状に至るまで、その年々に応じた、状況に応じた環境の整備には努めてまいったというふうに考えております。
ただ、事件数が増えているところ、そしてまた、子供をめぐる事件については、面会交流事件などのように、特に事件が増えているというのみならず、内容的にも非常に難しくなっている事件というのも多数ございますので、引き続き、そうした事件動向、事件処理状況等を注視しながら、必要な体制の整備に努めていかなければならないというふうに考えているところでございます。

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
御指摘のように、大変多様な専門性を持った対応が必要でございます。人員の増強プラス質的なクオリティーを上げていただくということ、今後も是非ともお願いいたしたいと思います。
その家事裁判の質的クオリティー上げる上で、これいつも申し上げますけれども、百家族あると家族百の形態があると言われておるくらい大変多様でございます。そういう中で、例えば、家事裁判についてガイドラインが必要ではないかと。
私も、アメリカ、諸外国の研究をさせていただきまして、例えば、米国各州では、最高裁が公表しているペアレンティングガイドラインというのがございます。こういう指針があれば、紛争が現場で大変ふくそうする中で、当事者の考えも整理されて、また、裁判官、調査官はより慎重に考慮しなければならない事案に集中でき、いわゆる裁判の負担の軽減、これはある意味で裁判の効率化というところにも資すると考えますけれども、最高裁判所の御見解はいかがでしょうか。

○最高裁判所長官代理者(手嶋あさみ君) お答え申し上げます。
米国におきまして、御指摘のようなガイドラインが策定されている例があるということは承知をしているところでございます。
最高裁判所におきましても、「子どもにとって望ましい話し合いとなるために」というタイトルのDVDを作成して各家庭裁判所に配付をしておりますが、これは、紛争の程度等にかかわらず、夫婦関係調整調停を始めといたしまして、広く子の福祉が問題となる調停事件の当事者に対して、子の利益を考慮しながら、子を中心とした解決に向けて話合いを進めることができるように、手続の早期の段階から親として理解していただいていることが望まれる情報をまとめたものでございます。このDVDにつきましては、裁判所のウエブページにおきまして動画配信をしているところでございまして、家事審判や調停の申立ての前後を問わず、広く御覧いただけるようになってございます。

○嘉田由紀子君 手嶋家庭局長さん、ありがとうございます。
今DVD作っていただいておりますので、こういうものもどんどん広めていくということが大変大事だと思います。
三点目の御質問ですけど、安倍総理が所信表明で引用した金子みすゞさん、「みんなちがって、みんないい。」、先ほど来も言及していただいておりますけれども、この金子みすゞさん、実は明治三十六年山口県生まれで、昭和五年、二十六歳のときに服毒自殺をされておられます。理由は、離婚により子供を失ったことだと言われております。
子供の親権について、当時の明治民法では、旧民法八百七十七条ですが、子はその家に存する父の親権に服すとございまして、子供は家に所属する、そして、親権は、親の離婚の有無にかかわらず家父長である父親に与えられる単独親権でした。また、女性は結婚すると、七百八十八条に基づいて夫の家に入るとされ、離婚すると、七百三十九条に基づき実家に復籍する、つまり、離婚した場合、民法の規定に従い、妻は子を置いて家を去らねばならない。別の言い方ですと、女の腹は借り物というようなことで、子を産む役割だけを、そしてその家を継承する役割だけを求められた女性の存在というのがございました。
先ほど来、高良委員も家制度がいまだに残っているということを御指摘くださいましたけれども、この母親と子は別の家に属する、このような社会通念が、ある意味で今の単独親権制度につながっているのではないのかと。今の日本が欧米のような共同親権であるならば、それこそ七十年前ですけれども、金子みすゞさんは自殺されることもなかったんじゃないのかと思います。
この明治民法の規定と離婚後に母親と子供との交流を禁ずる当時の慣行、法務大臣、御自身もお子さんをお持ちになって、いかがでしょうか。御感想、伺えたら有り難いです。

○国務大臣(森まさこ君) 大臣として感想を述べる立場にはないんでございますけれども、嘉田議員が滋賀県知事時代から一人親の支援事業をずっと行ってくださっていたことは深く尊敬しているところでございます。
その当時の一人親家庭サポート便りを読ませていただきましたが、母子自立支援プログラムや母子家庭自立支援教育訓練給付金事業、母子家庭等日常生活支援事業など、きめ細かく母子家庭、シングルマザーを支援なさってきたその御経験に基づいての御質問であると思いますが、私は常に申し上げておりますとおり、父母が離婚した後も、子供にとっては父母のいずれもが親であることに変わりはないという考えを持っておりますので、委員御指摘のとおり、一般論としては、父母の離婚後も、父母のいずれもが子の養育に関わることが子の利益の観点から重要であるものと考えております。

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
父母両方が子供の監護に関わるという方向性は、前回も申し上げましたように、御一緒でございます。ただ、残念ながら、現場ではまだまだ日本はこの民法八百十九条の単独親権の制度が、そして現場での判断に強く影響しております。
この上で、実は、単独親権としながら、親権者を決定すべき基準が一切明文化されておりません。ある意味では法の不存在と言えるでしょうか。先ほど来、例えば山下委員は、あるいは山添委員が、法の手の届かない地理的な範囲が増えているということを御指摘でございましたけれども、私自身は、この法の不存在、森大臣が言われますような司法過疎が、言わば親権の領域という分野的なところで過疎があるのではないのかと。法の支配がきちんと現場で実現できていないのではないのかと懸念をするものでございます。
と申しますのは、例えば金子みすゞさんのような悲劇は今もまだこの日本、目の前にございます。私たちは強く自覚しなければいけないと思います。先日、十一月十二日のこの本委員会での私の質疑を聞いてくださった東京都内のお母さんからお手紙をいただきました。その手紙には、自分は専業主婦で子育てをしっかりしてきたのに、突然夫により子を連れ去られてしまった、八歳になる我が子に会えなくなったと、手紙にはこうあります。子供と引き離され、会うこともできなければ、生きていく気力もありません。毎日死ぬことしか考えられません、本当に地獄ですと。この絶望的な心の叫び、ある意味で、ここではまた彼女も裁判所への失望も述べております。
一旦子供が連れ去られてしまうと、監護の継続性で会うこともできない、もちろん子供を取り戻すこともできない。そして、今のこの東京都内のお母さんだけでなく、日本中多くの父親が、裁判所の判決や裁判に基づく、親権を奪われて自殺されていると伺っております。私も具体的にそのような方のお話を伺っております。
考えましたら、金子みすゞさんが受けた苦痛、失望、いまだに多くの父親や母親が味わわなければいけない。明治民法が改められて七十年。家制度は改められたのに、残念ながらこの単独親権がいまだに強く残っているがために、父も母も、言わば両方は子供を愛し続けたい、関わり続けたいと思いながら、それがかなわず、そして子供は父と母どちらかに引き裂かれてしまうという、そういう状態にあるわけです。
このような大変残酷な法の不存在の仕組み、これを仕組みと言っていいのか、不存在自身が大きな仕組みだと思うんですけれども、このことにつきまして、先ほどの最高裁判所の家庭局長さんも頑張っていただいておりますけれども、森法務大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

○国務大臣(森まさこ君) 先ほど最高裁も答弁をしておられましたけれども、裁判実務では、親権者や監護者の指定に当たって、父母側の事情や子供側の事情等を総合的に考慮した上で、いずれを親権者又は監護者とすることが子供の利益にかなうかという観点から判断がされているものと承知をしております。
もっとも、この点について、子の利益を判断する際の考慮要素、すなわち、子の出生からこれまで主としてその子供を監護してきた者が誰かという点や、父母の監護意欲、子の心情等といった事情、事項について法律等で明示すべきという意見があることは承知しております。
こういったことも含めて、父母の離婚後の子供の養育の在り方については、家族法制に関する研究会において重要な論点の一つとして取り上げられるものと承知をしております。その中では、裁判所が親権者や監護者の指定について判断をする際の考慮要素についても検討されるものと聞いております。研究会において丁寧な検討がされることを期待するとともに、議論の推移を注視してまいりたいと思います。

○委員長(竹谷とし子君) お時間が過ぎておりますので、おまとめください。

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
是非とも具体的に、現場の裁判官が頼ることのできる基準を言語化して、そして法制化まで持っていただけたらと思います。
ありがとうございました。これで終わります。

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