トチノキ巨木林のトラスト基金完了報告の記者会見。

1500万円を超える浄財を関西中心に全国35の都道府県から寄せていただき、40本の巨木を伐採から守ることができました。深く感謝いたします。12月21日。

会計の小松明美さんから報告です。7月13日の募金開始後もなかなか集まらず、関係者一同心配していましたが、モンベルさんなど関西系企業などの参加も広がり、10月末には目標金額をこえ、1500万円に達しました。各種手続きを終えて12月20日の滋賀県庁での会見となりました。

振り込み協力者・団体は436件で住所判明者は35都道府県の389件。トップは滋賀県の89件、2番が大阪府で49件、3番が兵庫県で42件。4番・5晩は首都圏で、東京都が38件、神奈川県が25件。6番は京都府21件でした。小遣いを寄付してくれた小学生からの思いをこめた手紙には一同、涙しました。

背景については、私から説明。2014年の4月に長浜市旧木之本町杉野川源流部のトチノキ等巨木の伐採申請が業者から出された事を現職知事として知る。実は2008年から2009年頃、湖西高島市の安曇川源流部で数十本の巨木が同じ業者により伐採され、跡地の放置や土砂災害の拡大懸念、水源林の喪失、生き物の多様性破壊などを大きな課題として「巨樹・巨木保全」の政策を進めてきました。「またか!」と危機感がつのります。

2014年5月には知事として嘉田や、県・市・地元関係者で伐採予定地を視察。保全の価値があると判断。自然保護団体や市民・住民・学識経験者等から保全要望が出され、2015年5月には三日月新知事、藤井長浜市長等による伐採予定地視察および地元住民との意見交換が行われ、ふたりとも保全について前向きなコメントを行いました。2017年6月には、モンベルの辰野勇会長が、三日月知事、藤井市長、嘉田とともに視察をして、その価値の発信に加わって下さいました。

伐採業者との交渉ですが、2014年8月から、滋賀県立大学の野間直彦准教授と県とが伐採業者に対して伐採回避交渉を開始したが12月には物別れとなる。その間に地元所有者とも保全の交渉を続ける。

そして2016年1月には伐採業者が立木の所有権を求める訴訟を大津地裁に提起。「土地所有者から土地(山林)内の全てのトチノキ及びケヤキ・ヤマナシを買った」と主張。これまで安曇川流域や高時川流域で市民・住民として、巨木群保全に心を砕き伐採回避の経験を蓄積してきた人たちが結集して、2016年2月24日には「びわ湖源流の森林文化を守る会」を設立。

2017年1月には大津地裁の判決があり、伐採業者の主張は認められなかったが、2017年2月には伐採業者が大阪高裁に控訴。ようやく2018年6月に、「12月までに原告に解決金を払う」ことで決着。そこで急きょ、7月13日から解決金や裁判費用などをカバーするための総計1400万円の巨木トラストの呼びかけを始めました。対象は主に近畿圏で琵琶湖水を使っている住民の方たちで「蛇口のむこうにトチノキ巨木群を見てください!」を理念にトチノキの伐採回避とともに水源地域の生態系や生活文化の価値を世論に訴えました。

今後の活動としては、<保全・利用>と<研究>の両方があります。<保全・利用>で何よりも大切なのは、地元の人たちの気持ちに寄り添った活動です。観察会などは、住民の皆さんにガイドをしていただき入山、巨木林を楽しめる活動を行っていきます。その折には、長浜市と滋賀県が協働で設置している「ながはま森林マッチングセンター」と共催するなど、工夫をしてまいります。

また<研究>としては、滋賀県立大学や京都大学の教員、学生さんに参加をしてもらい、「トチノキ巨木の分布調査(特に断層破砕帯に集中して生育しているという仮説を検証)」「トチノキ巨木の樹形と樹木生理」「群集構造・植物相の分析を行い、巨木林の生物的自然の特徴を明らかにしていきたい、とお話をさせていただきました。

さらに<社会的展開>もあります。そもそもナショナルトラストは、自然環境や歴史環境を保護するために,住民がその土地を買い取ることにより保存していく制度・運動のことで、1890年代にイギリスからはじまり、日本では知床や和歌山・天神崎などが先駆的ですが、土地そのものを購入することはかなりハードルが高いのも事実です。今回は「立木所有権」だけを確保して保全する、という新しい方式であり、これをモデルとして全国に広げていけたら、という議論もさせていただきました。(1800文字、長くてすみません)。

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