Facebook 2019年4月26日 <平成の思い出(その1)>

本日の京都新聞の記事に誘われて、まずは2007年「全国豊かな海づくり大会~びわ湖大会~」での天皇陛下の「アメリカからのブルーギル持ち帰えりお詫び」発言で思いおこすことお伝えします。4月26日。長いです・すみません(1300文字)。


2007年11月10日から13日までの4日間、天皇皇后両陛下の滋賀県内でのご行幸啓に現職知事として同席させていただき、あらためて両陛下の、決して手をぬかない国民に寄り添った、徹底したふれあい場面の数かずと、環境や魚類研究への思いやご造詣の深さにとても感動しました。その中から3点だけ紹介させていただきます。

1点目は外来魚問題です。「外来魚やカワウの異常繁殖などにより、琵琶湖の漁獲量は大きく減ってきています。外来魚の中のブルーギルは50年近く前に私が米国より持ち帰り、水産庁の研究所に寄贈したものであり、当初、食用魚としての期待が大きく、養殖が開始されましたが、今のような結果になったことに心を痛めています」。式典会場では漁業者をはじめ全体からどよめきがあがりました。


当時の大会準備室長の東清信さんが京都新聞で証言しているようにこの発言内容が準備室に届いたのは11日の式典の2日前の9日の夜遅く。すぐに知事協議にあがってきました。原稿では、上の部分は赤文字で囲まれ「トル」とありました。理由は天皇にお詫びをしてもらうのは忍びない、マスコミが大騒ぎになるという事でした。私は、陛下の思いをそのまま受け止めたい、特に琵琶湖を永年研究をし外来魚問題に苦しむ漁業者に寄り添ってきた知事としては陛下のお言葉を歓迎したい。すべての責任は知事がもつから、と宮内庁に伝えるよう指示をしました。

いろいろ心配する担当者には天皇陛下のお言葉を受け止める覚悟について、2点の理由を伝えました。1点目は、昭和30年代には外来魚問題は研究者の間でも問題になっておらず陛下がおっしゃるように栄養補給が緊急の課題であったこと。時代背景を詳しく解説したいと。2点目は、マスコミからの記者会見は知事がすべて引き受ける。琵琶湖を永年研究してきた立場からどんな質問にも誠意を持ってこたえるので心配はしないようにと。式典後の記者会見では、宮内庁関係のマスコミの方もこちら側の説明を率直に受け止めて下さいました。ほっと安心しました。

二点目は、魚類研究への知識と思いの深さです。二日目の式典終了後、船で滋賀県立琵琶湖博物館をご案内しました。川那部館長や前畑学芸員など、魚類研究の専門家のご案内の中、水族展示室では、陛下自らが皇后陛下に、朱色の班点のトウヨシノボリについて等具体的に説明しておられました。学芸員の説明は不要でした!

三点目は、全く手をぬかないお手ふりの姿勢が感動でした。車の移動では、移動中お手をふりっぱなしでさぞかしお疲れと思いました。大津から貴生川までのお召し列車の中ではご休憩できるのではと思いきや、列車に乗られたらすぐに陛下と皇后さまは右窓と左窓の座席にそれぞれ座られ、「あの建物の窓に」「踏み切りのところで」というお付きの方のご案内にそってお手をふられ、途中全く休まれませんでした。


戦争の悲惨さを自ら経験したお二人であるがゆえに持たれる平和への強い思いと願い、そして災害が多かった平成時代の天皇皇后陛下ならではの被災地慰問の数かず。日本人の誠意をそのまま身をもって全人生の中で示されたお二人に深く感謝の思いがわきあがります。
(写真の出典は2008年3月滋賀県発行の『行幸啓誌 滋賀県』です)。

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